香港政府に対して、市民がよりよい生活を送るための経済や社会政策について提言を行っている「団結香港基金(Our Hong Kong Foundation)」が8月7日、香港政府の長期ビジョンである「香港2030+(Hong Kong 2030+)」に書かれている住宅政策をよりブラッシュアップした政策「強化東大嶼都会(Enhanced East Lautau Metropolis / ELM)」を発表した。それによると大嶼山(Lantau Island)南東部に2200ヘクタールにも及ぶ土地を埋め立てることを提言している。
香港政府による「香港2030+」では、香港島北部と九龍南部を商業核心エリア1とし、旧啓徳空港(Kai Tak Airport)を商業核心エリア2、ランタオ島の南東部、坪洲(Peng Chau Island)東部にある(交椅洲 / Kau Yi Chau)という小島を中心に1000ヘクタール埋め立て、そこを商業核心エリア3として造成すると掲げた。この3つのエリアをつなげることで強力な経済成長のエンジンとするのが狙いで、ここには人口40~70万人が住み、20万人分の雇用を生み出す地域にするという。
香港政府は2043年に人口822万人のピークを迎え、それから減少に転ずると試算。現在約740万人の人口を考えると2043年までの25年間で約100万人、日本でいえば政令都市1つ分の人口が狭い土地の香港に住むことになる。
ただ、香港の住宅を取り巻く環境はより厳しさを増しており、住宅価格の中間値でみると年収の19倍にまで高騰してしまった住宅を購入するのか、高額の家賃を支払って住むほかない。幸運にも公営住宅の抽選に当選しても、さらに5年は待たなければならない。香港政府は税収を考えると大幅に不動産価格を下落させられないほか、不動産価格が崩壊すると香港経済に大きな影響を与えてしまうため、マイルドに不動産価格を抑制しつつ、住宅供給を進めなければならないという難しいかじ取りが求められている。
団結香港基金では、それだけでは足りていないということから「ELM」を発表した。それによると、1000ヘクタールではなく2200ヘクタールの土地の埋め立てが必要だとしている。2200平方メートルとはビクトリア公園110個分、九龍半島の半分の大きさという巨大な埋め立てだ。この一帯はピンクドルフィンの生息地域でないこと、新技術を使って埋め立てることで環境へのダメージを少なくできるとしている。ここに25~40万戸の住宅を造り、70~110万人が住むとしている。車の通行は不可で、代わりに自転車専用道路を計画的に整備するとした。団結香港基金によると埋め立てには11年ほどかかるとしているが、30年後の香港を考慮した政策提言であるとし、医療、体育、教育、科学技術、工業向けなどの土地は総じて不足しているため、九龍半島に半分に匹敵する埋め立て造成地が出来れば不足分を補えるとしている。
香港国際空港(HKIA)は第3滑走路の建設を進め、香港とマカオ、珠海を結ぶ橋の供用開始も控えるなど、ランタオ島の経済的位置付けはより重要となっており、この提言は香港政府の計画にも影響を与えるとみられている。