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日本国籍を捨て香港人になった中村祐人選手が話題に 香港サッカー界の底上げを

香港代表としてプレーをする中村選手

香港代表としてプレーをする中村選手

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 香港のトップクラブの傑志(Kitchee)に所属する中村祐人選手が10月13日に香港のパスポートを取得して以来、大きな話題を呼んでいる。香港のプロサッカーリーグは、1968年創設とアジア最古のサッカーリーグで、さだまさしさんの弟、佐田繁理さんが1975年に日本人として初プレーして以来、岡野雅行選手ら多くの日本人選手が活躍してきた。そんな中、香港のトップクラブの傑志(Kitchee)に所属する中村祐人選手が10月13日に香港のパスポートを取得して、「香港人」になった。

プレー中の中村選手

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 中村選手の父は浦和レッズのGMである中村修三さんという環境の下、「気付いたらサッカーをしていた」とプレーを始めたきっかけ語る。その後、柏レイソルや浦和レッズのユース、青山学院大を経て卒業直前の2009年1月、香港のTSWペガサスと契約した。父、修三さんが知っている代理人が香港のトップクラブ南華(South China)とのつながりがあったが南華に空きがなかったため、選手枠に空きがあったペガサスと契約を結んだ。最初の試合ですぐゴールを決めるなどシーズンを通してチームに貢献。それが認められ次のシーズンはポルトガルのポルティモネンセに移籍した。「チームは2部から1部に昇格することができたが、あまり出場機会がなかった。ペガサスからは早い段階から『戻ってこい』とオファーを受けていた」と中村選手。

 2010年にペガサス復帰したものの、以前のような成績を残せず同年11月に退団。「ペガサスを首になって日本に戻った。アルバイトなどしながら半分、引退をするつもりでいた。そうしたら公民(Citizen)からオファーを受けた。香港は私を3度救ってくれたことになる」

 それ以降、南華、黄大仙(Wong Tai Sin)、和富大埔(Wofoo Tai Po)に所属し、いずれもレギュラーとして活躍し、今シーズンから現チームに移籍となった。「まだレギュラーを取り切れていないから、まずはそこ。アジアチャンピオンズリーグのプレーオフ予選で勝ち抜き本戦に出場できれば、日本のチームとも対戦できる可能性もあるので頑張りたい」とモチベーションは高い。

 日本でも、そして香港でも大きな話題となったのが、中村選手の香港パスポートの取得だ。これは7年連続して香港に住みパーマネントビザを取得したからこそ可能で、実際、香港パスポートもパーマネントビザ取得に合わせて申請した。「代表としてプレーしたかったというのが一つの大きな夢だから」と理由を話す。香港代表として早速招集され、初出場したインドネシアとの親善試合で「FIFAアンセムが流れた時と香港の旗を見たときは胸に迫るものがあった」という。

 「日本国籍を捨てて中国に行った」など、日本からは誹謗(ひぼう)中傷もあったが「それは気にしなかった」と語る。その一方で「私が香港代表選手に入ることで選出されない人も出てくるので、香港でも賛否両論があるのは事実。勝利に貢献できるプレーや、香港代表としてふさわしい振る舞いをしていかなければと思っている」と志を語る。「今後、日本代表と戦ってみたいし、何よりもっと上手になりたいという気持ちがある。それがなくなったときが引退の時期だと思っている」とも。

 昔はフォワードだったが、今は中盤の底、ボランチのようなポジションで出場している。「求められた状況において、その役割をこなせる、適応できる…というのが日本人の長所では。私も経験を積み、フィールドでの視野も広がった」

 香港のサッカー環境にも憂慮している。実際、香港でプロサッカー選手としてちゃんと食べられるのは一握りで、サッカーだけでは食べて行けず副業をこなす人も多い。「私もペガサスと契約したとき位は月給4500香港ドルだった。チームに寮があったり、後にペガサスに加入した岡野さんが食事に連れて行ってくれて生活はでき、選手として頑張ろうという気になれた。香港の場合、小さいころからサッカーをしていても16、17歳くらいになると辞める人が多い。勉強して、受験して、留学して、就職して…となるから。しかし会社を辞めてサッカー選手に戻った人も少なからずいるので、意志ある人には時間がもったいない。最初の給料は低いが、香港のサッカー界は頑張れば収入は必ず増えていく。プロとして結果を残し、職業としてのステータスを上げていくことが大事だと思っている」と香港サッカー界の底上げへの思いもある。

 中村選手は「地味なプレーでもいいが、自分の価値観の中で思った通りのプレーができると本当にうれしいもの。これを味わうとサッカーはやめられない。香港のサッカーはフィジカルを前面に出したイングランドのスタイルが色濃く、サッカーの原点ともいうべきスタイル。香港のサッカーを見に来てほしい」とメッセージを寄せる。

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