2000年代に入っていからデザインをはじめとした「創造/クリエーティブ」分野に力を入れている香港の湾仔(Wan Chai)「茂蘿街7號(7 Mallory Street)」で現在、関連イベント「設計光譜(Design Spectrum)」が開催されている。
香港は貿易に関してはフリーポートであったり、アジアの金融の中心であったりするなど、ビジネスの上で必要な機能に特化して発展を遂げてきた。そのため、物事をゼロから立ち上げる創造的なものは映画程度で、それ以外については総じて関心があまり持たれて来なかった。
しかし香港社会が成熟したこともあり、デザイン分野に目を向けるようになったのが特に2000年以降に顕著になり、同イベントを主催する「香港設計中心(Hong Kong Design Centre / HKDC)の創立も2001年である。
開催場所となっている「茂蘿街7號」は1910年代に建てられた建築で、住居と小売店を中心として使われた。香港政府から第2級歴史的建造物に指定され、香港芸術中心(Hong Kong Art Centre)が2013年から香港の漫画とアニメの複合施設「動漫基地(Comix Home Base)」として利用してきた。しかし経営が厳しく、2018年8月で運営停止が決定したため、その後は茂蘿街7號と名称を変え、展覧会の開催や短期の多目的スペースとして利用してもらう形で運営している。
同展は7月19日~9月18日に行われた第1弾に次ぐ第2弾。テーマは「貳頁 ― 看好設計(OPEN PAGE: THE ART OF THE CREATIVE PROCESS)」で、デザイナーがモノをデザインするときの第1歩=1ページ目は、どのように思考しているのか?などを知ってもらおうというもの。
その一つとして、さまざまな国や地域の500以上のデザイン誌を含めた数百冊ものデザインに関する雑誌や書籍を展示。書籍は貴重なもので、手に取って触ることのできないものもあるが、手に取って閲覧することのできる雑誌・書籍をできるだけ多く展示することにした。注目は、香港のアカデミー賞である「金像奨(Hong Kong Film Award)」で2016年に作品賞を受賞した「十年(Ten Years)」についての本「十年・内外(INSIDE AND OUTSIDE OF TEN YEARS)」。映画はオムニバス形式だったが、それぞれの作品ごとの劇作家と文化の専門家によるインタビューを載せ、作品の内側の人と外側の人の視点の両方を載せたという本に仕上げている。
グラフィックデザイナーで神戸芸術工科大学の杉浦康平名誉教授の著書である「脈動する本」、企画・構成を担当した「動く山 アジアの山車」なども展示。ほかにも、香港の独特の看板の文字スタイル、「北魏(ベイウェイ)楷書」、それが生み出す香港の街並みについての考察、椅子、ペン、カッター、ランプなどの工芸的な作品も展示している。
10月27日と11月2日・10日・17日に、会場を回るガイドツアーを無料で開催する(広東語・時間は要確認)ほか、今月25日には「漢字とは何か」をテーマに専門家に話を聞いた映像の上映会も無料で行う(中文字幕)。
開催時間は10時~19時(金曜~日曜は20時まで)。入場無料。11月17日まで。