日本政府観光局(JNTO)は1月17日、2019年の訪日外国人観光客統計を発表し、香港は前年比3.8%増の229万700人だったことが明らかになった。2018年の香港市場は前年を下回ったが、民主化デモの影響もなく、2年連続の前年割れは避けられた。
訪日客全体でみると同2.2%増の3188万2100人と調査を始めた1964年以来、過去最高を今年も更新した。日韓関係の影響で韓国が前年比25.9%減の558万4600人まで落ち込んだが、ほかの19市場で過去最高を記録し落ち込みをカバーした。これまでアジアの国々の人が訪日観光の中心となっていたが、2019年はラグビー・ワールドカップ(RWC)などの効果でイギリスが前年比27%増の42万4200人、オーストラリアが同12.6%増の62万1800人、フランスが同10.8%増の33万6400人とラグビーでティア1と呼ばれる強豪国の観光客が予想通り訪日客数増加に貢献した。2020年は東京オリンピック・パラリンピックが控えているが、RWCは1カ月半近く開催期間があり、会場が全国12か所に散らばっていたため、観光客は日本中を回遊した。かたや東京五輪は世界中の国から選手が集まるが、開催期間が約2週間で、基本的に会場は東京が中心となり回遊性が落ちる。五輪期間中は「ホテルが高くなる」「人が多いのでは」と考える人が多く、実際には過去の五輪では観光客は減る傾向にある。東京五輪もそうなる可能性も少なくないため、いかにして訪日客を呼び込むかが課題となる。
国・地域別で見ると、トップは中国が同14.5%増の959万4300人と900万人台を突破した。2018年は800万人超えを果たしたが2019年は900万人の壁を超え、2020年は1000万人の数字が見えてきた。2位は前述の韓国で、3位は同2.8%増の489万600人を記録した台湾だった。
香港も「定位置」の4番目で、中国、韓国、台湾と「四天王」を形成している。JNTOは「6月上旬以降継続している「逃亡犯条例」改正案への反対を発端とする大規模デモの影響で、空港閉鎖等混乱も発生したものの、日本の地方都市を着地とする航空路線の新規就航や増便等に伴う航空座席供給量の拡大もあり、通年の訪日外客数は過去最高を記録した2017年(223万1568人)を上回った」と分析している。「常連客」である香港人への旅行促進のため2019年より「日本 總有再去的理由」(=日本にはいつももう一度訪れる理由がある)という新規のテーマでプロモーションを始めた。これは、家族、カップル、友人などいろいろな形態での旅行スタイルで、全ての世代の香港人に対して生涯に渡って日本観光を楽しんでもらおうというものだ。
逃亡犯条例改正案を巡っては、香港人は日常生活の中で緊張感が張り詰めた中で生活を送っている日があり、デモの合間に日本を訪れてリフレッシュを図っていた香港人も少なからずいた。
外国人旅行者の消費総額は、前年は4兆5,189億円から4兆8,113億円に増えた。そのうち香港は3,524億円で全体の7.3%を占め、前年比で4.9%増加した。内訳は、宿泊費が1,045億円、飲食費が833億円、交通費が365億円、娯楽等サービス費が99億円、買い物代が1,178億円などなっている。1人当たりの消費額も0.9%増の15万5,911円とわずかながら増加した。こちらの内訳は、宿泊費が4万6,422円、飲食費が3万6,962円、交通費が1万6,200円、娯楽等サービス費が4,408円、買い物代が5万1,822円などだった。
今年も引き続き、香港からの訪日の動きは伸びを見せていくことが予想されているが、一方で日本からの来港者は出張者も含めて激減しており、安定的な航空路線維持のためには日本からの来港も大変重要と考えられている。