在香港日本国総領事館、ジェトロ香港事務所、日本商工会議所が4月21日、四半期ごとに実施している「香港を取り巻くビジネス環境に係るアンケート調査」の結果を発表した。
アンケート調査は2019年9月に始めて以来7回目。調査は4月1日と7日・8日にネットで行い、同会議所の正会員(515社)と香港日本料理店協会会員(91社)、香港和僑会会員(26社)、計632社を対象に実施し、228社から有効回答を得た。(その他団体に所属していない11社も含めると有効回答数は239社)
直近の2021年第1四半期(1月~3月)の香港はこれまで同様、政府の水際対策措置の継続による国境を越えた往来の制限によって営業活動に大きな支障が続いている。同期の香港は一部クラスターなども発生したものの、第4波のように長期に渡る大きな感染拡大はなく推移してきた。
今年1月~3月の業績が前期(2020年10月~12月)と比較して、「改善」と「悪化」「大変悪化」が拮抗している。「改善」と回答した企業の割合は前回の35.1%から9ポイント減少し、26.1%となった。この中で大きく改善が見られたのはホテルと観光で、前回「大幅悪化」と回答した企業の割合が顕著に減少したのは精密・電気・電子機器。一方、飲食や小売りは「悪化」「大幅悪化」の割合が50%となった。
大幅悪化を挙げた企業の理由としては、「香港市場での売り上げ減少」が半数以上の52.5%を占め、中でも「飲食」は旧正月による営業日数減という要因もあり、特に中間層向けの飲食店への影響が多かったという。悪化の理由としては「調達コストの上昇」を挙げた回答も13.6%あったものの、中国本土の景気も回復傾向が見られ、電気・電子、ガラス、鉄、化学・プラステック、木製建材など世界的な景気回復の兆しが見られるという面もある。
一方「改善」と回答した企業(59社)の中で理由(複数回答可)として最も大きな割合だったのも「香港市場での売り上げ増加」で、人材、ビジネスコンサルなどをはじめ、飲食でもファインダイニングなどは予約ができない店も多くあるなどの特徴が見られる。ほかにも改善の理由として割合が高かったのは、中国本土への輸出拡大による売り上げ増加(32.2%)や中国以外の海外への輸出拡大による売り上げ増加(30.5%)など。
今年4月~6月期の見通しについては、前向きな見方も強い。「改善」と回答した企業の割合は28.8%となり、前期 (14.3%)に比べ14.5ポイント増加。「悪化」「大幅悪化」と回答した企業の割合については13.1%となり、前期25.0%から12.8ポイント減少した。業種別に見ると、「改善」と回答した企業の割合が顕著に増加したのは、精密・電気・電子機器、飲食など。さらに運輸・倉庫なども前期に比べて「悪化」「大幅悪化」の割合が大きく減少している。多くの企業が香港市場での売り上げ増加を予測している。
逆に「悪化」「大幅悪化」と回答した割合が前期と比べて大幅に増加したのが建設・不動産業だったことからも、中長期的な見通しが必要な産業では悲観的な見方が続いている。
香港国家安全維持法制定の影響について、その理由として一番回答が多かったものは、「情報に制限が掛かる恐れがある」となり、65.6%の企業が憂慮している。回答企業全体の50.8%が国家安全法そのものについて「懸念している」としながらも、マイナスの影響が生じていると回答した企業は6.4%にすぎず、懸念している企業の割合も昨年7月は81.4%、10月期が66.8%、今年1月期が54.4%に続く、今回の50.8%と、段階的に懸念が減少しつつも、同時に下げ止まり感も見られる。
今回の調査では「香港拠点の今後の活用方針」についての質問に関連して、「これまでに香港の拠点の規模縮小や見直しを行ったか」という点についても質問したところ、人員削減、事務所移転、システム投資の抑制、一部機能の本土へ移管などを行った企業があった。業種としては、電気・電子部品、繊維、金融(地方銀行を含む)、旅行会社などで、コロナ禍で中国本土に入境制限が続く中で、香港の人員を減らして中国強化する傾向も見られるという。出入境ができれば、香港に拠点を構えながら、本土の広東省に出張するスタイルを取ってきた企業も多いが、先行きが見えないことからも、業務遂行上の課題、最も困っていること(複数回答可)として「香港・中国間の出入境制限」を挙げた企業が全体の79.7%ともっとも高い結果となり、「香港-日本間の出入境制限」よりも関心が高いことが分かった。