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丹後エリアの課題に香港理工大生が提案 京都海洋高生との交流も

京都での滞在は叶わなかったが、香港から真剣に丹後の未来を考えた学生たち

京都での滞在は叶わなかったが、香港から真剣に丹後の未来を考えた学生たち

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 京都・丹後エリアをテーマに香港の学生が学びを深めるプログラム「持続可能な丹後の里山・里海モデル創出事業」の報告会が6月30日、香港理工大学で行われ、香港側からは学生30人が参加した。これは、地震や台風などの自然災害や海洋汚染、人口減少・高齢化による一次産業の後継者不足など、多くの課題に直面する京都京北エリアについて、6月の初旬から香港理工大学と京都府立海洋高校、京都地域内外のさまざまなプレーヤーとの国際連携教育プログラムを通じて、豊かで持続可能な丹後の里海・里山づくりを目指し、双方向での学びの場を深めるプログラム。今年は京都に滞在して学ぶことができなかったため、全てのプログラムはオンラインで行われた。

香港の学生たちのアイデアはすぐに実現できそうなものも

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 香港理工大と京都府の交流事業は3回目。2年前、台風で被害を受けた木材からツリーハウスを作るフィールドワークが最初の交流プロジェクトだったという。6泊7日の京都での滞在を通じて、きこり樵の方から植生について学んだが、今回は「海の京都」エリアについて取り組んだ。6月4日には京都府立海洋高校の2・3年生が英語で海洋高校のユニークな授業や取り組みを紹介。他に、オンラインでロープワークの仕方を教わったり、京都で生産されている水産加工品の缶詰も実際に香港側に送り、試食と新しいパッケージデザインを考えてもらうなどの取り組みも含まれた。

 豊かな宮津湾の海洋資源について、里海を守るための漁礁づくりや漁獲量制限の取り組み、地域資源を生かした商品開発など、丹後の地域の魅力や直面している課題に対するプレゼンテーションには、いずれも消費する観光ではなく、学びながら滞在するという視点が組み込まれたものが多い。同エリアの閑散期でもある春と秋に、どのように人を呼び込むかなど含めて、日本人にも活用できるような提案が多く発表された。

 プレゼンテーションの中には具体的なアイディアも飛び出した。例えば、それぞれの海産物についての紹介を入れた「フィッシュカード」。レベルごとに色分けされたカードは、子どもや観光客が学ぶことができるだけでなく、海に関わる仕事の人、地元の人達も活用できる工夫が凝らされている。それぞれの魚や貝の重さ、1人当たりどれくらい取っていいかなどの情報も書かれ、どのように漁をするといいのか、どのように食べるとおいしいかなども1枚のカードで分かり、家族でも企業でも興味をもって持続可能な海について学ぶことできるようにした。宮津の海洋生物の漁期と産卵期を調査してまとめた表を用意し、休息期間は観光などで地元の人が収入を得られるような仕組みを作る提案もあった。

 ほかにも携帯アプリ「Tangopia」を開発する提案も。丹後を学べるアプリで、丹後を訪れた人が地元に貢献することでポイントを得ることができ、それをローカルで食事を楽しむことなどに使えるという仕組みだ。住宅価格が著しく香港では自分の家を買うことが難しい香港人にとって、「ポイントを集め、地元に貢献し続ければ家を手に入れられるかもしれないという夢につながる」という声も聞かれた。

 同大の陳翔助教授は「短い4週間のクラスだったが、この提案が丹後地域の何か役に立つといい。私自身が学生に驚かされた。科学的で合理的な学生がいるかと思えば、感情的でロマンティックな学生もいたりして、楽しく過ごさせてもらった。このアイデアをブラッシュアップしていきたい。」とプログラムを振り返る。「この学生の中から丹後エリアで働ける人がいればいい」とも。観光が成熟する香港市場では、今後もこうした滞在型の教育プログラムが求められている。

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