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香港で企画展「エットレ・ソットサス&倉俣史郎」 現在につながる日伊の出会い

エットレ・ソットサスと倉俣史郎の作品が並ぶ貴重な企画展

エットレ・ソットサスと倉俣史郎の作品が並ぶ貴重な企画展

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 香港・中環の荷李活道にあるギャラリー「Novalis Contemporary Art Design Gallery」(197 Hollywood Road ,Central)で現在、ポストモダンデザインを率いた2人の巨匠に注目した企画展「Ettore Sottsass&Shiro Kuramata(エットレ・ソットサス&倉俣史郎)」が開催されている。

倉俣史郎の1987年の作品であるテーブル「SALLY」

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 1980年代に起きたポストモダンデザインの動きのきっかけとなったのが、デザイン集団「Memphis(メンフィス)」を立ち上げたエットレ・ソットサスの存在。日本からは倉俣史郎が参画したが、今年はメンフィス結成から40周年、倉俣史郎没後30年の記念の年に当たる。メンフィスに倉俣史郎が加わったきっかけは、ソットサスからの1通のレターだったというが、この記念すべき年に、春に開催されたアートセントラルで一つの出会いがあった。メンフィスの家具を展示するブースで、Novalis代表ウィリアム・フィグリオラ(William Figliola)さんと香港をベースに活躍するUnited Voice, Studio ARRT代表の盛世匡さんが出会ったことから話が弾み、今回の企画展開催につながったという。

 ウィリアムさんはメンフィスの家具を世界から買い付け、メンフィスの精神を現在にも伝えることを使命にイタリアと香港でギャラリーを持つ。アートセントラルから準備期間は約2カ月余り。ギャラリーは限られたスペースではあるものの、「美術館レベル」だという20点ほどの作品を、盛さんがキュレーターとなって展示する。

 ポストモダニズムとは、戦後主流となってきた機能性、生産性重視のモダンデザインから、デザイン本来の人間性を中心とした自由な表現と可能性を試みた時代の動きともいえる。機能性やシンプルさの背景には効率の良さを求めたメーカーの考えなどもあり、「デザインを商業ベースのみで考えるべきでない」というアンチテーゼは、現代の多様なデザインが、ここを起点としていると考えることもできる。現代の日本では、モノトーンのシンプルなものがクールでミニマルだという傾向もあるが、当時メンフィスが提唱した多様性を求める疑問は現在もさまざまなシーンで息づく。

 展示作品の一つ、ソットサスがメンフィスの活動で発表した本棚「カールトン」は、高さと幅が190センチのアイテムで、イタリアならではのポップな色使いと垂直ではなく斜めの棚板で三角や台形の空洞を組み合わせたオブジェのような作品。倉俣デザインの角テーブル「NARA」は、1980年代には主に駅のプラットフォームや地下道の床に用いられていた花こう岩の粉を使い、大理石と顔料、セメント等を練り合わせて硬化させたものに、色をした吹きガラスのガラスくずを混ぜている。ほかにも色味の違う緑のガラスを組み合わせ、ひび割れたガラスを2枚のガラスで挟んで3層から成る天板にしたテーブル「SALLY」は置いてあるだけで光が割れ目の模様を壁に映し出す。

 「倉俣史郎の世界は作品集にも描かれているスケッチが特徴的で、そのスケッチは動画的で浮遊感がある」と盛さんは言う。「そのワクワクする感じはメンフィスの作品にある『引き出し』がよく表しているように思う」と加え、「例えば、引き出しを作ることでデザインに対話が生まれる。デザインとは人と人、モノと人との出会いであり、この貴重な展示を前にいろいろなことを感じ取ってもらえたら」と話す。

 同企画展は14日まで。営業時間は12時~19時。日曜定休。

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