香港立法会は10月20日、「分間樓宇單位 / ●房(Subdivided flat)」と呼ばれる極めて狭いアパートについて、家賃や契約期間などに制限を加える「2021年業主與租客(綜合) (修訂)條例草案(Landlord and Tenant (Consolidation) (Amendment) Bill 2021)」を賛成多数で可決した。改正された条例は、官報に掲載されてから3カ月後に施行され、予定では2022年1月から実施される。
●房とは、基本的に唐楼や築年数が数十年という古いアパートで見られる形態で、1戸のアパートをさらに区切って複数のユニットを作ることでできた、面積の小さな居住スペースのこと。部屋の大きさが小さくなることで家賃が安くなることから主に低所得者が住んできた。大家にとっても、例えば600平方フィートの家を1万8,000香港ドルで貸した場合と、1戸あたり150フィートの大きさのユニットを4つ造り、それぞれを5,000香港ドルで貸した場合、合計で2万香港ドルとなるなど、より多くの稼ぎを得る手段となっていた。
分割された部屋は、一戸一戸にトイレと台所がある場合もあれば、トイレだけは全てに備え付けられているが台所は共同だったり、トイレも台所も共同だったりするなどさまざま。窓が無い部屋、電気代は部屋それぞれの場合もあれば、大家が契約上は1つのユニットとして契約し、全ての電気代を戸数分に分けて徴収する場合もある。
運輸及房屋局(Transport and Housing Bureau)が2021年3月に提出した「『●房』租務管制研究工作小組報告」によると、2020年に●房が行われている2万9897戸を調査したところ、分割後は10万943戸となっていた。1戸当たり3.38戸分の部屋に区切った計算になる。居住人口は22万6,340人にのぼる。政府組織は異なるが2015年7月に政府統計処が出した記録では、●房数は8万5,500戸、居住者は19万5,500人となっており、住宅問題が悪化していることが分かる。
●房の81.9%が築50年以上だった。63%が13平方メートル(約140平方フィート)未満部屋に住み、1人当たりの部屋の大きさの中位数は6.6平方メートル(約71平方フィート)だった。●房の92.7%にはトイレが、95.9%に台所が付いていた。ユニットごとに独立した電気メーターは86.8%、水道メーターは83.2%が設置されていた。95.9%に窓が設置されていたが、逆をいえば4.1%は窓が無い部屋も存在する。
月収の中位数は1万5,000香港ドルと香港全体の中位である3万3,000香港ドルの半分以下だった。家賃の中位数は4,800香港ドルで1平方メートル当たり417香港ドルだった。ただし、40平方メートル(約430平方フィート)の一般的なアパートでは九龍(Kowloon)は301香港ドル、新界(New Territories)は368香港ドルになることから、家賃は安いが、割高な部屋に住んでいるのが実態。居住者の56%が2年以上住んでおり、85%は賃貸契約書に必要な権利や責任などに明記していないなど必要な条項を満たしておらず、契約年数は1年以上2年未満が60%だった。
今回改正された条例では、大家と入居者の両方の権利や責任が書かれた賃貸契約書を交わすことを義務化。契約期間は「2年+2年」という4年間の居住権を保証しなければならない。最初の2年を経過した後の次の2年の家賃を値上げする場合でも上限は10%までとなる。併せて、大家が水道代や電気代の徴収を乱用してはならないと規定した。
100万ドルの夜景に象徴されるなど見た目はきらびやかな香港だが、●房は香港の住宅問題を象徴するダークサイドの部分。香港社会の最大の問題である住宅について、解決の方向に一歩進んだと見られている。
●=當へんにりっとう。