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MTR屯馬線、全線開通 九龍北東部へのアクセスが格段に向上

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 屯門(Tuen Mun)から紅●(Hung Hom)を経由し烏渓沙(Wu Kai Sha)を結ぶ「屯馬線(Tuen Ma Line)」が6月27日、全線開通した。九龍(Kowloon)と新界(New Territories)を横断と縦断をする路線となり移動が格段に向上する。

宋の時代の貨幣や陶磁器など、出土品を紹介する駅構内

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 開通当日の朝、新設された駅の一つで開通を記念した一番列車の出発駅となった宋皇臺(Sung Wong Toi)駅には駅のシャッターが上がる前から一番列車に乗ろうと大勢の人が詰め掛けた。鉄道を運営する香港鉄路(MTR)が改札、プラットホームなどポイントごとにカウントダウンするなどして開通を盛り上げた。早朝5時50分、屯門行き列車が動き出すと車内では大きな歓声が上がったほか、MTRの金澤培(Jacob Kam)CEO自ら記念品を乗客に手渡した。

 屯馬線は、総延長56キロとMTRが運営する路線の中で最長で、全27駅、乗り換え駅は6駅ある。屯門から屯門南(Tuen Mun South)まで延伸する計画があるほか、途中に洪水橋(Hung Shui Kiu)駅という新駅の建設も計画中。全てが完成すれば総延長57キロ、29駅となる。

 8両編成で屯門から烏渓沙までの所要時間は73分、運賃23.5香港ドルとなるが、乗車後150分以内に下車にしないと罰金62.5香港ドルが徴収される。繁忙時間は3分おきに運行する。 

 全線開通は、啓徳(Kai Tak)駅と何文田(Ho Mam Tin)駅間の最後の工事が終わることで実現した。この2駅の間には宋皇臺駅と土瓜湾(To Kwa Wan)駅の2駅を新設する。開通により中環(Central)駅から土瓜湾駅までの所要時間は20分、●湾西(Tsuen Wan West)駅と宋皇臺駅であれば24分になるほか、啓徳駅と尖東(East Tsim Sha Tsui)駅はこれまで2回乗り換えが必要で32分を要していたが、13分に短縮されるなど九龍北東部へのアクセスが格段に向上する。

 開通を記念してMTRでは、啓徳、宋皇臺、土瓜湾、顯徑(Hin Keng)駅で乗車または下車した乗客は来年1月1日まで、八達通(Octopus)を利用すると1香港ドル引きにするなど、いくつかの特典を用意している。

 宋皇臺駅の由来は、南宋が元の侵攻を受けたため、南宋の第8代皇帝の端宗(趙●)とその弟で南宋の末代皇帝(第9代)である祥興帝(趙●)が何とかたどり着いたところが香港だ。ここで2人は亡くなり、宋朝は滅亡したが、その記念碑である宋皇臺花園(Sung Wong Toi Garden)が近くにある。

 駅の工事をしていた2014年4月、宋の時代の貨幣や陶磁器など400点余りが出土し工事を中断しなければならないほどで、大きな話題を呼んだ。そこで駅構内に長さ7メートルと15メートルのショーケースを作り、出土品を展示している。井戸も発見されたため、天井には井戸の底の部分が見らえるように工夫したほか、プラットホームの柱を一部くりぬいて香港の芸術家が作品を展示できるようにした。

 ここはタイ料理店などタイ文化が広まっている九龍城(Kowloon City)にも出口が直結している。泰人恩福服務中心によると5年前には100近いタイ関係の店があったが、MTRの開通による家賃上昇により、現在20~30店舗が閉店。今後も家賃の上昇は続くものとみられており、街の特色が薄れることが懸念されている。

 もう一つの土瓜湾駅は、馬頭圍道(Ma Tau Wai Road)沿いの地下に建造された駅で、この周辺は唐楼など古い建物が多い住宅街として知られているほか、東部は工業ビルが密集しているところとして知られている。住民などにとっては待ち望んだ地下鉄の開通となる。

 この20年、MTRは開発を一気に加速させてきた。2002年8月18日は将軍澳線(Tseung Kwan O Line)、2003年12月20日が西鉄線(West Rail Line)、2004年12月21日は馬鞍山線(Ma On Sha Line)、2005年8月1日は迪士尼線(Disneyland Resort Line)、2007年8月15日は落馬洲支線(Lok Ma Chau Spur Line)、2007年12月2日には香港地鉄(MTR)と九広鉄路(KCR)が合併して現在の香港鉄路が誕生した。2009年7月26日には将軍澳線支線として康城(LOHAS Park)駅が完成、2014年12月28日は港島線(Island Line)が堅尼地城(Kennedy Town)方面に延伸、2016年12月28日は南港島線(South Island Line)、2020年2月14日は屯馬線一期(Tuen Ma Line Phase 1)と9つものプロジェクトが実施された。一部は現存の路線と重複するが、それは先行開通としての措置であり、香港の鉄道網は一気に進んだことが分かる。

 次は東鉄線(East Rail Line)を南に延伸する形で南北走廊(North South Corridor)と呼ばれる紅●から金鐘(Admiralty)までの6キロの路線が2022年の開通に向けて工事が進められている。

 紅●=石へんに勘。●湾=草かんむりに全。趙●=日かんむりに丙。

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