香港の高級住宅街の一つでもあるハッピーバレー(●馬地)に12月3日、仙台箪笥(たんす)を中心に、家具や工芸品を販売する「Monmaya」(G/F, 89 Wong Nai Chung Rd, Happy Valley, Hong Kong)が旗艦店をオープンした。門間屋は2017年に現地法人を香港に置き、仙台の本社は来年4月で創業150周年を迎えるが、香港では百貨店に常設店を構えて4年、新たな挑戦に出た。
店内には門間さんの生家で、登録文化財でもあったものの、数年前に道路計画により取り壊された築90年超の古民家の建具を壁面、空間の仕切り、天井、カウンターに生かした。150平方メートルの店内には一枚板を並べるだけでなく、テーブルやソファを置いて、日本の住空間を紹介するショールームのように仕上げた。
旗艦店オープンの理由は、仙台箪笥や家具、工芸品だけではなく、建具も含めた日本の住文化そのものを次世代に引き継ぐことを目的にしているという。香港で本格的な日本様式の住宅リノベーションを手掛けることも大きな特徴。「正しい日本の空間」をトータルコーディネートできる企業として新たなスタートを切る。
門間屋は1872(明治5)年創業の仙台箪笥の老舗。仙台箪笥は伊達政宗公の時代に作られたといわれ400年以上の歴史を持ち、「指し物・塗・金具」を特徴とする工芸品。最後の磨き上げを何回も繰り返す箪笥は日本円で100万円程度のものにも、2~3倍の値段が付く。特に中国本土では樹木に資産価値を見出す人も多く、一点物の希少価値のあるものが売れる素地がある。
同社は2017年9月、SOGOに販売コーナーを設け、その後、常設展開を続けてきたが、同社は7~8割の売り上げを現在は海外で作り、その中でも香港のみ常設コーナーを続けるなど好調を維持してきた。民主化デモやコロナの影響は少なからず受けてきたものの、安定した自分たちの発信の場として今回、路面店開業に至ったという。
香港を要衝となる場所と捉え、国内の販売も厳しい中、選択と集中の考えから、国内は仙台にある生産拠点をこの先も守り、そして売る場所は海外を中心にしていきたいというのが同社の狙い。「職人を守るためには、職人の仕事と収入が増え、弟子を取りたいと思ってもらえる環境づくりが何より大切」と門間一泰さんは話す。
SOGOでも、仙台箪笥以外にもテーブルやチェアなどのダイニング家具も販売してきたが、スペースや周りの売り物など環境にも制限があることから、路面店では見せ方などにもこだわり、日本の工芸品にも触れてもらうことで、「5から10年後に室内そのものを日本にしたいというファンが生まれたら」と期待を込める。
営業時間は11時~19時。
●=足へんに包。