歴史の面影が残る石畳で知られるポッティンガーストリートに続く屋外エリアがある中環の「NOJO」で11月28日、イベント「秋祭り」が開催された。主催は香港日本料理店協会。「香港における日本人社会がリードしたリアルに交流ができる場」と位置付けて開催され、長く続くコロナ措置により制限されていた交流を多くの人が楽しむ場となった。
当日は「日本の味覚」を提供しようと、丸ごと炭火で焼いたサンマを目玉に、ホタテ、ポップコーン、焼き芋、おでんなどのブースを設けた。当日店内に入場できたのは350人ほどで、会場の外に人があふれ、入れないほどにぎわいを見せた。開催に当たり、同協会の氷室会長は「日本料理店協会は、まずは日本人コミュニティーの皆さんに愛される存在でなければいけない。日本料理の特徴である『旬』を感じてもらえることが大事ではないかと思い企画した」と経緯を話す。
食のブースに加え、ヨーヨー釣りや駄菓子のつかみ取りなどができるコーナー、つまようじや針などを使い絵柄をくり抜く「カタヌキ(型抜き)」など、縁日文化を象徴する遊びは初めて体験する子どもも多く、その懐かしさから、続いて挑戦する大人の姿も見られた。浴衣のレンタルや着付けもあり、多くの子どもが浴衣姿で花を添えた。
イベントに協力した青森県は、日本に行けない人たちに少しでも文化的な体験をしてもらおうと、青森の姫リンゴ「アルプス乙女」を使ってリンゴ飴(あめ)を自分で作る体験や、南部せんべい焼き体験のコーナーを用意。ねぶた祭の跳人(はねと)の衣装を身にまとったスタッフのサポートを受けながら、粉や水、塩などをボウルで混ぜ、自分でせんべい種を作り、専用の型に入れて、両面を1分ずつひっくり返すなどしてできあがるパフォーマンスを楽しみ、思い出を写真に収めていた。
ほかにも、コロナ禍の影響で2年連続開催が見送られたねぶた祭の灯を香港でも思い出してもらおうと、ねぶたの灯籠作りの体験コーナーも用意した。これは黒石市で、祭りなどで実際に使った「ねぷた絵」を再利用した灯籠やうちわの販売・制作体験を行う工房「いろどり」が制作したキットを使い、これを香港の電気でも使える仕様に組み替えて、灯籠のそれぞれの面に自分が好きなようにねぶたの端切れをカットしてオリジナルの作品を作るもの。同じ色を一つの面にそろえる子どももいれば、紙を立体的に折ったものを貼り付ける子どももいたりと、国際色豊かな香港だからこその彩り豊かな作品ができあがった。
香港日本料理店協会は2029年で50周年を迎える。その記念すべき年には10万人規模の盆踊り大会の開催を視野に入れ、「今後も積極的に香港で『日本祭』と感じられるようなイベントを企画していきたい」という。次回は1月2日、餅つき大会を開き、目の前でつきたての餅を提供する予定。