香港政府は1月14日、新型コロナウイルスに関する経済対策の第5弾「防疫抗疫基金(the Anti-epidemic Fund)」について発表した。総額は35億7,000万香港ドル、で1月17日から申請を受け付ける。オミクロン株による厳しい防疫対策を実施することから27の分野にわたり、幅広い業界についてカバーする内容とした。
香港は17日現在、累計感染者数が1万2867人、死亡者は213人、回復者1万2491人、新規感染者は7人で、1人のみ地場感染とされている。一方、ワクチン接種者については、1回目が515万0554人(76.5%)、2回目も終えた人は472万7068人(70.2%)となっている。3回目の接種回数は67万6891回だ。
香港政府は厳格な水際対策と防疫対策で、特に2021年に関しては新型コロナウイルスをほぼ抑え込んできたきたこともあり、前回の第4弾が立法会で成立したのは2020年12月21日。第5弾はそれ以来の久々の救済策となる。
実施する背景には、香港大学医学院の梁卓偉(Gabriel Matthew Leung)院長が「オミクロン株においてのゼロコロナ政策は不可能な任務」と言うほど感染力が高く、2021年12月30日に感染力が強いオミクロン株の市中感染が確認されて以降、市中感染が収まる気配は今のところ見られない。そのため、現在実施している防疫対策は2020年に実施した時と似ており、経済を停滞させるほどの厳しさがあるためだ。
申請は1月17日から担当部署で受け付けているが、過去の経済対策を見ると、第1弾が300億香港ドル、2020年の財政予算案で1,200億香港ドル、第2弾で1,375億香港ドル、第3弾は240億香港ドル、第4弾は54億香港ドル、今回の第5弾は35億7,000万香港ドルだ。今回はソーシャルディスタンスなどの措置によって影響を受ける23業種と長い間、事実上事業を凍結状態にある産業4業種の合計27業種が対象で、前回の第4弾の19業種から増加した。総額は減少したがカバーする業種は増加したことになる。
具体的な対象者は、ソーシャルディスタンス関連では、飲食業、商業目的の浴室(サウナ)、花市などに参加する予定だった店舗、漁農自然護理署(AFCD)主催でキャンセルとなった美食嘉年華(FARMFEST)の出展者をはじめ、美容院・マッサージ・パーティールーム、映画館、フィットネスセンター・スポーツ施設、クラブハウス、公共のエンターテインメント施設でのライセンスを保有者、ゲームセンター、スポーツ用地の運営者、アミューズメント施設のライセンス保有者、麻雀/天九施設のライセンス保有者など。ほかにも康楽及文化事務署(LCSD)が原因でスポーツ・レクリエーション・文化プログラムなどが中止となり、それにより影響を受けたフルタイムとパートタイムのインストラクターやスタッフ、登録されているスポーツコーチ、芸術・文化分野に関係するフリーランサー、コンサートや舞台に関係する団体、流行音楽に関係する企業、子どもケアセンター、非政府の福利機構で教える習い事の先生、非正規のカリキュラムを行う私立学校、幼稚園・私立学校、学校向けのケータリング業者・スクールバスサービスの関係者などがこれに当たる。
事業凍結状態の枠としては、旅行代理店、「綠色生活本地遊」と呼ぶ香港のグリーンライフ関係のツアー、航空サービス、ボーダーを超える輸送を担う企業だ。
飲食業には17億6,100万香港ドルを投入する。各種レストランは面積に応じて5万~25万香港ドル、カラオケ、バー、パブはさらに2万5,000香港ドルを申請でき、この2つのカテゴリーで1万7600余りの店が対象になると見込まれている。屋台なども2万5,000香港ドル、フードコート出店者は面積に応じて1万~5万香港ドルが支給される。
商業目的の浴室は5万香港ドル、映画館は上限を150万香港ドルとして1スクリーンあたり5万香港ドル、フィットネスセンター・スポーツ施設、ゲームセンターは5万香港ドル。幼稚園は規模により3万ドル~8万ドルとなってる。
旅行代理店は、従業員10人以下であれば1店舗あたり一律5万香港ドル、11人以上であれば1人あたり5,000香港ドルとして職員数分を計算し、その総額が渡される。旅行代理店の職員などには1人7,500香港ドルが支給されるなど、細かく規定されている。