深水●(Sham Shui Po)に、香港の公営住宅を中心とした歴史を紹介している「美荷樓生活館(Mei Ho House)」(Block 41, Shek Kip Mei Estate, 70 Berwick Street, Sham Shui Po, Kowloon, Hong Kong TEL 3728 3500)が11月1日、再オープンした。2020年から展示エリアを改修していたが、リニューアルにより1950~60年代の香港の生活にフォーカスするなど、当時の香港庶民の生活がこれまで以上に理解できるような内容を加えた。
美荷樓は、香港第1世代の公営住宅で歴史的建造物の2級に指定されている建物。イギリスが香港を統治していたころ、イギリス政府は植民地の住民に対して充実した社会福祉を提供することはなく、昔の香港人の住環境は理想的とはいえなかった。1953年12月25日のクリスマス、住宅が密集していた石硤尾(Shek Kip Mei)で大火が発生し、約5万8000人が家を喪失した。原因はランプが壊れ引火したことだった。さすがの香港政庁も住民を救済しなければならず、それが公営住宅建設の始まりとなったともいえる。
突貫工事で作られた美荷楼は1954年に完成。上から見るとHの形をしている香港第1世代の公営住宅だ。全384世帯、120平方フィートが基本で、各戸にトイレがなく共同トイレで、台所もなくベランダでコンロを使って調理しなければならなかった。上水道も敷設されず、マンションの2カ所に設置されていた蛇口に向かい、そこでバケツに水をくみ取りに行き、家にある貯蔵タンクに入れて保存するなど、今では考えられない厳しい環境だった。
第1世代の住宅は1970年代に入り改修がおこなわれたが、総じて老朽化が進み2005年に閉鎖したが、2013年に美荷樓生活館とユースホステルを併設する形で生まれ変わった。これまでに90万人が訪れるなど昔の香港を知ることのできる場所として人気を博している。
リニューアル後、「歳月留情(Memories of Our Days)」と呼ぶ1950~60年代の市民の生活をテーマにしたエリアが加わった。映画、街市、大牌●、水資源、理髮店などよりカテゴリーを細分化し、合計約25に分けて展示する。大牌●の名前の由来や当時の各メニューの価格など、1つのカテゴリーについて丁寧に説明するほか、当時使っていた物を並べるのではなく、絵や写真など駆使して当時の生活がより目に浮かぶような展示にするなど工夫を凝らす。音響効果、AR、アニメなどデジタル化活用した演出も行う。
美荷樓生活館の入り口には、香港生まれのイラストレーター麥震東さんが1950年代から現在に至るまでの深水●や石硤尾の街の変化を色鮮やかに描いた作品も加わった。
開館時間は10時~18時。月曜休館。入館無料。
●=土へんに歩。●=木へんに當