香港は1月22日、旧暦の正月を迎えた。気温も18度と穏やかな元日となり、日本の初詣に当たるお参りの習慣もあることから「黄大仙」の寺院には、大みそかの深夜から多くの人が集まった。昨年は「黄大仙」が1956年に市民に開放されて以来、コロナの影響で初めて新年の3日間が閉鎖されたが、今年は通常通りの開放となった。「一番に線香をあげた人が今年一番の福を得る」といういわれもあることから、開門と同時に全速力で走り抜ける香港版福男のイベントも今年は復活。今年は香港で活躍する日本人芸能人の和泉素行さんがこの栄誉を獲得した。
黄大仙で一番最初に線香を立てたのは、日本人アーティスト和泉素行さん
旧正月では、「新年快楽(サンリンファイロッ)」という、日本でいう「あけましておめでとうございます」を意味する言葉とセットで、「お金持ちになれますように」という意味の「恭喜發財(コンヘイファッチョイ)」や「健康でいられますように」という意味の「身體健康(サンタイギンホン) 」という言葉をかけ合う。
「渡しただけ自分に返ってくる」といもいわれる香港版のお年玉「利是(ライシー)」は、香港では子どもだけではなく、独身者は何歳になってももらうことができ、会社では部下などにも感謝の気持ちを込めて配ったり、なじみのレストランのスタッフやクリーニング店の店員たちにも渡す。この時期、この利是を求めて、いつもより管理人の人数が多くなることも、香港では当たり前のほほえましい光景となっている。一般的に旧暦1月15日まで続く。
ほかにも23日までは旧正月前から続いてきた花市(はないち)」と呼ばれる青空巨大マーケットに出かける人も多くいた。大型公園「ビクトリアパーク」をはじめ、香港にある15ほどの公立公園が屋外の花市場に変わり、縁起の良い植物から飾り物までそろえることができる。最終日は、朝6時まで続く活気に満ちた青空マーケットとなる。
元日や旧正月2日目(22日・23日)には家族や親戚の家を訪れることも多く、定番ゲームは「麻雀」をすることも。正月が若い世代や子どもに麻雀のやり方を教える機会にもなっている。
旧正月3日目(24日)には、沙田(シャーティン)で旧正月競馬を開催。競馬、獅子舞のパフォーマンス、旧正月の華やかな飾りも多く取り入れ、「エネルギーに満ちたイベントの一つ」になっている。香港東北部の大埔(タイポー)という村にある、昔から香港の人たちの間で「願いがかなう不思議な樹」として親しまれている木に、願い事を書いた紙やミカンを投げる「願かけイベント」に行く人もいる。
かつては旧正月の時期に数多くの観光客が海外から訪れ、繁華街の大通りを通行止めにして行う華麗なパレードや、花火などが香港の目玉だった。「尖沙咀(チムサーチョイ)」の目抜き通りをパレードし、世界の国や地域からパフォーマーが旧正月の始まりに花を添え、テレビで生中継していたが、これらのプログラムはまだ再開することはなかった。
香港政府観光局は、ビクトリア・ハーバーのウオーターフロント各所に華やかな旧正月のインスタレーションを設置する「Fortune Around Hong Kong」を開催している。同イベントでは、スターフェリーの乗り場であるセントラル・ピアの屋上から巨大な「ラッキーラビット」が顔を出したり、金鐘(アドミラルティ)の添馬公園(タマルパーク)、湾仔臨時海浜花園、尖沙咀の香港文化センターといった海岸沿い各所にも「ラッキーラビット」が登場したりして、照明や音楽などインタラクティブな要素で彩られたインスタレーションを楽しむことができるようにしている。