陳茂波(Paul Chan)財政長官は2月22日、2023-24年度の財政予算案を発表した。
今年の目玉も3年連続で18歳以上を対象に電子マネーの給付。ただし、ウィズコロナにより経済が回復してきたこともあり前年の半分の5,000香港ドルとなる。所得税の免税や交通費の一部補助など総額923億香港ドル分を支出して香港経済の回復を加速させるほか、個人の財政的不安を軽減させる。
2022-23年度の予算について、一般歳入は当初7,159億香港ドルで計画されていたが、コロナ禍で経済が不安定だったことが影響して、最終的には6,038億香港ドルと想定より歳入が伸びなかった一方、一般支出は当初の8,073億香港ドルから8,096億香港ドルに増えた。
2023-24年度の一般歳入は6,424億香港ドルで、これに政府債券650億香港ドルを加え総額7,074億香港ドルとなる。支出は7,610香港ドルで、536香港ドルの赤字。来年3月31日までの財政備蓄は前年の8,173億香港ドルから544億香港ドル減の7,629億香港ドルに減少するとする。
財政備蓄は、2018-19年度には、過去最高の1兆1,700億香港ドルあったが、コロナ禍による経済悪化を受け、それを回復させるためここ数年、支出超過が続いている。しかし、2024-25年度からは経済成長を続け、歳入が歳出を上回るとして2027-2028年度までには9,837億香港ドルまで回復すると見込む。
2022年の経済成長率は、当初2~3.5%の成長を予想していたがオミクロン株など入境規制が続いたことなどからマイナス3.5%とマイナス成長だった。2022年度はウィズコロナとなり経済を回していくことに主眼を置いているため、感染力が強く、かつ強毒性の変異株が出現しなければ3.5~5.5%の経済成長になると予想している。
歳出を分野別に見ると、社会福利=1,290億香港ドル(シェア15.9%)、衛生=1,248億香港ドル(同15.4%)、教育=1,147億香港ドル(同14.2%)で、不動のトップ3が全体予算の45.5%と約半分を占めた。2021年度、新型コロナ対策のため最も多い予算が付いた衛生だが、今年は社会福利がトップとなった。これは、香港の少子高齢化社会が深刻化したことによる関連予算が増えているため。トップ3に続くのは、インフラ整備=887億香港ドル、経済=705億香港ドル、保安=660億香港ドル、環境・食物=466億香港ドル、住宅=79億香港ドルなど。
個人を対象に見ると、18歳以上の永久居民に対して5,000香港ドルの電子マネーを支給するとした。2020年は1万香港ドルの現金、2021年以降は電子マネーで5,000香港ドル、2022年は再び1万香港ドルだったが、今回実施で4年連続での支給となる。今年4月にまず3,000香港ドルを支給し、残り2,000香港ドルは年度内に行うが、下半期になるのが有力。2022年度から香港に住み始める香港居民や留学生などは一定の条件を満たせば、半額の2.500香港ドルの支給が予定されている。
所得税は、前年同様に上限を6,000香港ドルとして予定納税額の100%を減免する。香港政府に支払う土地のレーツについては、最初の2回分を上限1,000香港ドルで免除。住宅用の電気代は1戸当たり1,000香港ドルの補助金が付く。公共交通機関については月額200香港ドル以上の利用者を対象に、1カ月当たり500香港ドルを上限として補助しているが2023年10月まで延長する。出生率を上げるため子育てや子どもが生まれた人に対しては免税額を12万香港ドルから13万香港ドルに引き上げる。2024年に開催される進学受験テスト「香港中學文憑考試(HKDSE)」の受験料無料を継続する。
法人では、事業所得税は個人所得税と同じ6,000香港ドルを上限に100%免除。レーツは非住宅において最初の2回分を上限1,000香港ドルで免除する。政府関係が所有する不動産物件を長期または短期で借りる場合は6カ月間、価格の半分を免除する。
旅行代理店などを支援する「旅行社鼓勵計劃(The Travel Agents Incentive)」は2023年3月が期限だったが6月まで延長。大勢の観光客やビジネスマンに来港してもらうため、大型のイベント、会議、展覧会用に3億香港ドル、香港を宣伝するためのプロモーション費用に5,000万香港ドルの予算を計上した。これによる来港目標者数は100万人を狙う。
ブロックチェーンを基盤とした分散型のインターネットである「Web3.0」を推進するため5,000万香港ドルの予算を付けるほか、生命や健康について研究をしている大学や研究機関に60億香港ドル、人工知能や量子力学の基礎研究に30億香港ドル、知的財産についての専門を招聘(しょうへい)するために1,000万香港ドルを支出する。
文化芸術では、2024年に「●港澳大灣區文化藝術節(GBA Culture and Arts Festival)」の開催を計画し、2,000万香港ドルを投じる。5,000人の芸術家の作品を展示し、14万人の入場者を見込む。グリーンな都市を目指すとして、燃料電池車(FCV)のバスまたはトラックが実用できるかどうかを検証するため2億香港ドルを組み、実証実験を行う。電動モーターのフェリーの建造と充電施設を建設することを想定し、補助をするために3億5,000万香港ドルの予算を組んだ。
住宅では、12画分の住宅用地を売却し2万戸の住宅造成を実施する。民間住宅では、今後5年間で7万2000戸の民間住宅を建設するほか、2023年から5年間で年平均1万9000戸を供給。公営住宅では36万戸分の土地を確保するとしている。
●=奥かんむりに号