香港の芸術のハブである「西九龍文化区(West Kowloon Cultural District / WKCD)」で現在、デジタル技術を使ってオーロラを出現させるショー「藝創明天(Creative Tomorrow)」が開催されている。
亜熱帯に属する香港では本来、オーロラを体験することはできないが、香港市民の間で話題となっている。アートのハブを目指すWKCDは香港政府肝いりのプロジェクトで、西九龍という香港中心部に残る最後の未開発の大規模な土地を使って進められてきた。既に広東オペラ用の施設「戯曲中心(Xiqu Centre)」、コンテンポラリーアートを展示する「M+」、大規模な公園、プロムナードなどが整備されているほか、2022年7月は中核施設の一つである「香港故宮文化博物館(Hong Kong Palace Museum)」がオープンするなど、着々と建設が進められている。
今回の企画「藝創明天」は、香港賽馬会(HKJC)が香港返還25周年を記念して6億3,000万香港ドルを拠出して実施するプログラムの一つ。中でも「機縁都會(SerendiCity)」は、アートを作り出す楽しさ、体験する喜びなどを革新的なテクノロジーを通じて知ってもらおうという試みで、香港内外のアーティストを招聘(しょうへい)して、多彩なプログラムを組んでいる。
機縁都會はWKCD内の3カ所で実施するが、目玉はデジタル技術を使ってオーロラを再現する「約定極光(Borealis)」。オーロラは北極や南極といった高緯度地域の冬に発生する現象であることから、亜熱帯に属する香港で見ることはできない。香港からオーロラを見に行くのも簡単ではない。しかし、デジタル技術を使えば再現できることから、「オーロラを香港市民に体験してもらおう」と南国ならでは企画が実現した。デジタル技術関連では、過去にプロジェクトマッピングを使った「Hong Kong Pulse 3D Light Show」を文化中心(Cultural Centre)で開催する実績などがあり、デジタルを使って芸術のすそ野を広げたいという意図もあると見られる。
オーロラを再現する会場は藝術公園(Art Park)の大草坪(Great Lawn,)で、19時~22時に開催。光を出す最先端のテクノロジーを使って、色相、密度や天候の変化も再現することで、実際にオーロラを見ているかのような感覚を生み出す。
同じく19時~22時、藝術公園で行っているのが「夜光森林(Petrichor)」。こちらはオーロラとは異なるコンセプトで、人工の霧、上空に森の茂みなどを投影し、外部環境によって刻一刻と変化していく様子を表現する。「自然の神秘さを感じてもらうプログラム」だという。
「智能閃閃(Distributive Intelligence/A Group Mind)」は12時~20時、戲曲中心で開催。人工知能(AI)を搭載したロボットを駆使したインタラクティブなショーで、人間がロボットに近づくとそれに反応してさまざまな光を発するが、アーティストによる作品らしく、不思議な光の体験ができるもの仕上げた。観賞は無料だが、先着順でウェブ登録が必要。
いずれのプログラムも3月5日まで。