香港バス「九龍巴士(一九三三)/KMB」は7月30日、初の2階建てのEVのバスを正式に投入した。路線番号は213Mでは、九龍(Kowloon)地区北東部にある安泰(On Tai)~MTR藍田駅(Lam Tin Station)間を結ぶ路線となる。香港政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指しており、KMBもその方針に沿ったもの。
対象となった213Mの出発・終点の安泰邨(On Tai Estate)は2017年ごろに入居が始まった公営マンション群で、約8600戸、約2万5000人が住む新興住宅地。地下鉄駅からは一定の距離があるためバスは欠かせないことから選ばれた。車内にドライバーの顔を認識するカメラを設置し、顔認証装置を使ってドライバーの疲労などをチェックできる。異常を感知した場合は、警告音や座席を振動させることでドライバーの意識をはっきりさせ、安全運行につなげる。
自動車業界、特に欧米、中国では電気自動車へのシフトが進んでいるが、香港政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指すとし、2035年の時点で2005年と比較して炭素の排出量を半減させる政策を打ち出している。加えて、2035年より以前にガソリンまたはハイブリッド車の新規の登録を停止する予定だ。
この流れを受け、2021年には城巴(City Bus)と新世界第一巴士服務(New World First Bus Services)を運営する匯達交通服務(Bravo Transport Services)が香港初のEVバスを導入しテスト運行も行った。6月9日~7月23日、中環(Central)の香港観覧車(The Hong Kong Observation Wheel)のすぐ隣にある「海濱活動空間(Harbourfront Event Space)」でイベント「中環夏誌(SummerFest)」が開催されたが、そこでは過去の内燃機関で動く2階建てバスを展示した一方、EVバスを展示するなど、市民に理解を深めてもらう努力をしている。
KMBは、2022年に「1階建て」のEVバス16台を導入し、EVでの運行についてのノウハウを蓄積してきた。そして今年は、BYD社の2階建て車両「B12D」の投入を決めた。全長12メートル、乗車定員は115人、充電時間は約2時間で、既にこの車両を42台発注している。車体の色は環境を意識した緑色で、航続距離は300キロ。効率よく使うため、電池の状態を常にセンサーなどで監視して水冷装置を使って温度管理をするほか、ブレーキをかけたときに電気を回生するシステムも組み込まれている。
これ以外でも、カーボンニュートラルに貢献するため、省エネのバスにすることを目指す。KMBは、EVバスと内燃機関で走るバスは、今年中に総保有台数を2000台にする計画を立てているが、そのうち半分はバスの天井にソーラーパネルを付ける。こうすることで、燃料で賄っていたバス内の照明などをソーラーパネルなどに委ねることが可能になり、燃費が5~8%ほど改善される。さらにその照明にもLEDを使うほか、各座席にUSBポートを設置することが可能になった。加えて5GのWi-Fiサービスも提供する。
エンジンを停止したときに車内温度が35度を超えると太陽光発電を使った換気システムを作動させ、車内温度を8~10度下げる。この結果、バス1台当たり年間6トンの二酸化炭素を排出を抑えることが可能となる。
KMBは屯門(Tuen Mun)と大埔(Tai Po)に充電ステーションを設けているが、20億香港ドルを投入して4、5年以内に850基の充電機を保有する予定だ。最新型の充電施設は200キロワットアワーの急速充電で、小型化されたことで場所を大きく取らないほか、電池性能が落ちていないかなどをセンサーなどで常に監視する。