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香港でも旧正月近づく お年玉や正月飾りなど各家庭で準備進む

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 2月10日旧正月を迎える香港では徐々に旧正月ムードが高まり、1月25日、香港の各銀行でお年玉用の新札の提供が始まった。香港の旧正月は中国本土とは異なり、2月10日~13日が公休日となるが、今年は週末が重なり通常より短いことから、3日間の休暇を取得して9連休にする人もいる。

お年玉の袋「利是封」は銀行やショッピングモールなどで提供するもののほか、文房具屋や雑貨屋などでも販売する

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 香港では、新年を迎える前に自宅の掃除を行い、家をきれいに片付けて不要なものを捨て、清潔にすることで「悪運を家から追い出す」と考える。大掃除が終わると、壁や扉に貼る伝統的な「揮春(ファイチュン)」と呼ぶ赤い紙に縁起の良い言葉を書いて、旧正月の飾り付けを行う。文字として多いのが幸福の「福」の文字で、「福」が倒れて来るほど舞い込んでくるようにという願いを込めて、「揮春」を上下逆さまに貼り付けることも多い。

 旧暦12月30日の夜には、家族全員で夕食をする習わしもある。いつもよりぜいたくでたくさんのおかずが並び、縁起が良い食材も多く入れる。言葉(発音)にかけた食材も多いが、例えば、干しガキのオイスターソース煮「●●(ホウシ)」は、景気や商売繁盛の意味を込めた「好市」を願ったもの。

 髪の毛の塊のような中国野菜の一つ「髪菜」には、金持ちになる「發財」という意味を込める。スイーツには、白玉粉で作った団子「湯圓(トンユン)」が欠かせない。丸い白玉は家族円満を意味するため。家族で食事をした後、「年宵花市」という青空巨大マーケットに出かけたりもする。今年の花市は香港内の各大型公園などで2月4日にスタートする。

 日本でも「一年の計は元旦にあり」ともいうが、香港でも寝坊すると、「ダラダラと一年を過ごすことになる」といういわれもあり、早起きをする人が多い。

 香港にも旧正月にお年玉を渡す習慣があり、日本とは入れる金額や渡し方が異なる。お年玉は広東語で利是(ライシー)と呼び、ライシーを渡す相手は子どもだけではなく、独身者、会社の部下、マンションの警備員、なじみのレストランの店員など幅広く感謝の気持ちを込めて渡す。新札には「新年の新しい空気の象徴」という意味があるため、ライシー袋の中には新札のお金を入れることが多い。

 自宅や会社のビルの管理人たちにも渡すが、ライシーをもらうために突然管理人の人数が多くなることも、香港では当たり前の光景。タワーマンションなどでは、いくつもの棟を渡り歩く管理人もいる。お年玉は、「渡しただけ自分に返ってくる」という声もあり、金持ちほど大盤振る舞いして配る様子も見られる。こうしたやり取りは一般的に、旧暦1月15日まで続く。

 ライシーの相場は20香港ドル程度から始まり、日頃から世話になっている人には50香港ドル、会社の部下や親戚のような関係が近い人には100香港ドル、自分の子どもには500香港ドルなどといわれているが、厳格なルールはない。マンションの警備員やなじみのレストランの店員に100香港ドルを渡す人もいるが、偶数が一般的。「2」は幸運と繁栄、「6」は願いがかなう、「8」は富を象徴する。「4」は偶数だが死と音が似ているため不吉なので避けたほうが良いとされる。奇数は葬式などで包む場合に使うため、避けたほうが良いなど気にする人もいる。

ライシー袋の色は「魔よけ」の赤色、または「高貴な色」とされる黄色や紫色が多く使われ、袋の表面には「恭賀新禧(新年の幸福を祝う)」「大吉大利(幸運でうまくいく)」などの縁起の良い言葉が書かれている。

 ライシーを渡す際は、「明けましておめでとう」の広東語「新年快楽(サンニンファーイロッ)」、または「金持ちになれますように」の広東語「恭喜發財(ゴンヘイファッチョイ)」という言葉を交わして手渡すのが一般的。ライシーを受取った人は、「健康でありますように」を意味する広東語「身體健康(サンタイギンホーン)」または「全てがうまくいきますすように」を意味する広東語「萬事如意(マンシールーイ)」と縁起のいい言葉を返す。

 香港では旧正月に日本のお節料理に当たる「盆菜」を食べる習慣がある。盆菜とは、一つの大きな器に調理された鶏、あひる、魚、エビ、カキ、豚、湯葉、シイタケなどが盛り付けられる料理で、伝統的には旧正月前に手作りするが、最近はレストランやホテルへ依頼することが多い。盆菜の歴史は数百年あり、香港の新界(ニューテリトリー)エリアの元朗(ユンロン)辺りでは原住民の伝統的料理とされる。昔は新年だけでなく新居への引っ越し、祖先の霊堂の開廟など、めでたい出来事があった際に盆菜で祝ってきた。

 香港でも親戚の家などを訪れて一緒に旧正月を祝うが、このときの定番ゲームは「マージャン」。正月が若い世代や子どもにマージャンの仕方を教える良い機会にもなっている。初詣に当たるお参りの習慣もあり、「黄大仙(ウォンタイシン)」の寺院には、大みそかの深夜から多くの人が集まる。「新年一番に線香を刺した人が今年一番の福を得る」という説もあり、日本の福男のイベントのように、開門と同時に全速力で走り抜ける人たちがいるのも風物詩の一つ。

 ほかにも、正月3日目には、香港東北部の大埔(タイポー)の村にある、昔から香港の人たちの間で「願いがかなう不思議な木」として親しまれている木に、願い事を書いた紙やミカンを投げる願かけイベントに出かける人もいる。

 ●●=虫へんに豪、豆へんに支

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