アメリカの経済誌「フォーブス」は2月21日、2024年の香港のトップ50人の長者番付を発表した。トップに立ったのは、デベロッパーの長江和記実業(CK Hutchison Holdings)を創業した李嘉誠さんの362億米ドル(約5兆4,000億円)だった。コロナ禍後、観光と消費に支えられ2023年の経済成長率は3.2%に達したが、不動産と輸出が低迷し、香港の株式指数で恒生指数が前年比28%も減少したことにより、香港の富豪50人の純資産総額は前年比9%減の2,960億米ドル(約45兆円)に減少した。
李さんは、長者番付で20年以上トップに君臨してきた。2020年に一度、デベロッパー最大手の一つ、恒基兆業地産(Henderson Land Development)の創業者、李兆基さんにその座を奪われたものの2021年に再び1位に返り咲いた。それから現在まで1位を保っている。しかし、資産額は前年の390億米ドル(約5兆9,000億円)から減少。不動産市況の不調が直撃した。
2位は前述のヘンダーソンランドの李兆基さんも順位を維持したが、303億万米ドル(約4兆6,000億円)から270億米ドル(約4兆1,000億円)に減らした。不動産株は不調だったが、ホテルとガスの事業が好調だったため、減少幅を抑えることができた。
3位になったのも4大デベロッパーの一つ、新世界発展(New World Development)のトップである鄭家純(Henry Cheng)さんとその家族で、中国経済の不調などから資産額は221億米ドル(約3兆3,000億円)と1年間で約25%も資産を減らした。鄭さんは、自分の後継者は外部の人間になることを示唆している。
4位は、前年の193億米ドル(約2兆9,000億円)から177億米ドル(約2兆6,000億円)に減らした、オイスターソースで知られる食品会社、李錦記集団(LKK Group)を経営する李兄弟だった。前年まではコロナ禍で「自宅時間」が増えたことによる自宅での料理が資産増加に貢献していた。しかし、アフターコロナで外食の機会が増えたことが影響したと見られる。
5位は、デベロッパーの会徳豊(Wheelock)とその傘下の九龍倉集団(The Wharf (Holdings))の元会長、呉光正(Peter Woo)さんの137億米ドル(約2兆円)だった。銅鑼湾(Causeway Bay)の時代広場(Times Square)、尖沙咀(Tsim Sha Tsui)の海港城(Harbour City)はこれらの企業が経営しているが、前述のデベロッパーと同じように不動産市況の不調が響いた。
5位までは前年と順位が変わらなかったが、6位にランクインしたのは、華人置業(Chinese Estates)の劉鑾雄(Joseph Lau)さんの131億米ドル(約1兆9,000億円)で、逆の前年の6位から8位に順位を下げたのは、香港最大手デベロッパーの一つ、新鴻基地産(Sun Hung Kai Properties)の共同創業者である郭得勝の妻の?肖卿さんの114億米ドル(約1兆7,000億円)。順位は下げたが、女性の中でトップだった。
このようにデベロッパー・不動産王国の香港だが、ユニークなところでは15位になったのが、1985年創業の香港の電動工具メーカー、Techtronic Industries(TTI)のトップHorst Julius Pudwillさんの49億米ドル(約7,400億円)。ドイツ国籍のPudwillさんはパートナーと一緒に同社を創業。日本の工具メーカー「リョービ」を海外で展開するライセンスを取得している。外国人が香港で成功を収めた人物とされる。
加えて、2013年に香港で設立された振興の物流企業Lalamoveの創業者である周勝馥(Chow Shing Yuk)さんの19億米ドル(約2,900億円)が41位と50位以内に初ランクインした。昨年、香港証券取引所でIPO(株式公開)したことによる。