香港の地上波ViuTVで5月5日、東北の海の幸を紹介するテレビ番組「食盡日本東北海之味」が放送される。在香港日本国総領事館企画の下で制作された特別番組として、ViuTV99チャンネルで12時30分より放送される。
番組の進行は、日本の気象庁に当たる香港天文台の元副長官で、テレビ番組などの気象情報でも知られた存在の梁栄武さんを起用。梁さんの相手方として、日本情報を発信するKOLの一人である「PEGGY先生」も進行役として加わった。岩手県の達増拓也知事、青森県の宮下宗一郎知事も出演し、進行役に県内の海産物の魅力や出会える場所について指南する。さらに香港から在香港日本国総領事館の岡田健一大使も輪に加わり、番組を盛り上げる。
東北の海産物を取り上げるに当たり、豊かな漁場である三陸海岸にフォーカスを当てるため、番組は青森県の「種差海岸」からスタートする。司馬遼太郎も著書「街道を行く」で「どこかの天体から人がきて地球の美しさを教えてやらねばならないはめになったとき、一番にこの種差海岸に案内してやろうと思ったりした」と書いたように、さまざまな景色と意味もつ場所である種差海岸は、自然が織りなす美しさがあり、最北の蕪島(かぶしま)はウミネコの繁殖地でもあり、「よい漁場を教えてくれる存在」と言われることから、番組のオープニングを飾る場所として選ばれた。このウミネコを番組の一つの鍵とし、ほかに岩手県の浄土ヶ浜でも船で海側から海岸線を望み、ウミネコの襲来を受ける場面も登場する。
番組全体は、岩手県内は釜石から宮古、浄土ヶ浜、田野畑、その後青森は八戸から入って青森市内までの海岸線を北上していく構成とした。釜石では15センチほどにもなるサイズの大きな「泳ぐホタテ」に驚いたり、宮古では「カニ祭」に参加し、毛ガニの一本釣りに参加する場面もあり。同じホタテでも青森での主力商品は「ベビーホタテ」で、同じ東北でも種類や魅力が異なることを伝える。
ほかにも、アワビ、カキ、ワカメ、毛ガニ、タラ、イカ、シジミなど両県が誇る海産物が次々と登場。東北の食材を単に「おいしい」と紹介するのではなく、梁さんが、その気候や海流などと海産物が育つ関係なども掘り下げて解説。「通常の旅番組とは違った角度で東北の食材に焦点を当てた」という。放送は広東語放送だが、日本人が観ても十分に楽しめる内容に仕上げた。
香港ではいまだに海産物の輸入について10都県の輸入制限の継続が続いているが、消費者の多くが日本の海産物を避ける様子もなく冷静に受け止めている。震災以降、東北への直行便が戻っていない香港市場だが、東京などを経由して多くの香港人がこの春も訪れるなど注目は高い。「番組を通じてより東北の食材を身近に感じてもらい、香港で楽しんだり、東北を訪れるきっかけにしてもらいたい」という制作の狙いがあるという。