上環で毎日行列ができる人気の海南チキン店「勇記」が4月22日、上環の永吉街に姉妹店となるローカル麺専門店「勇記養生鶏湯米線」(Shop A, G/F, Shing Hing Commercial Building, 21-27 Wing Kut Street, Sheung)をオープンした。
もともと上環の「勇記」の移転を考えていたというオーナーの陸志勇さんは、「勇記」を今回の新しい場所に移転させようとしていた。しかし、最終的には海南チキンの「勇記」はそのままの場所で営業を続けている。同ブランドは2020年のコロナ禍に紅●で開業。ホテルで海南チキンの担当として働いていた陸さんは、コロナの規制も厳しい中、妻と妻の兄夫婦と4人で開業の道を選んだ。その味が評判を呼び、2店舗目を上環にオープンし、そこから徒歩圏内に3店舗目を開いた。
今回、麺をメインとした店を開業する背景には「ある客の声があった」と陸さんは振り返る。海南チキン店では毎回オーダー時にドリンクやスープをセットで選ぶことができるが、なかでも鶏のココナツベースのスープが人気であるにもかかわらず1日150杯程度しか提供できず、なかなかスープにありつけない客が多くいた。「いつでもこのスープが飲めるような店を」との声から、香港人のソウルフード「米線(まいしん)」と組み合わせるのはどうかという考えに至ったという。店内は相席利用も多い丸テーブルを中心にして、ボックス席も含め70席を用意した。
看板の鶏は「三黄鶏」を使う。全店舗で1日約420羽の鶏を使い、スープベースには、200斤の鶏の足と200斤の鶏の骨、40~50羽の鶏を丸ごと使って寸胴で煮る。白濁としたスープに、氷砂糖と塩を入れる程度の味付けで仕上げる。鶏の濃さが強いため、他の調味料はあまり必要ないという。スープに使った鶏は味を出すためだけに用意し、「香りがスープに溶け込むようにした」と話す。
香港では「米線」と呼ばれるライスヌードルは麺の主流で、この麺をメインに提供するチェーン店なども多い。同店ではこの米線の中でも少し細めの麺を使う。メニューは薬膳「養生」にこだわったもので、全部で8種類を用意。麺だけでなく、皿に盛ったご飯、ご飯をスープに入れる「湯飯」からも選択できるようにした。
「黄酒薬膳鶏米線」(72香港ドル)は、スープは茶褐色で、三黄鶏、雲耳、赤ナツメ「紅棗」、湯葉「腐皮」のほか、オレンジ色のサナギタケ「蟲草花」や赤いクコの実「杞子」などを入れ、提供時に酒の香りも立つ。80度~90度の温度でゆっくり鶏も煮込む。
「胡椒豬肚鶏米線」(72香港ドル)は陸さんの「お薦め」で、鶏肉、豚の胃「豬肚」、ツリガネニンジン「沙參」、キクラゲ「雲耳」、湯葉「腐皮」などを入れ、「食べると温かくなるので、冬の時期に向いている」という。
「養顏花膠鶏米線 」(76香港ドル)は、スープのベースには鶏肉、魚の浮袋「花膠」、キヌガサダケ「竹笙」キクラゲ「雲耳」、湯葉「腐皮」を入れた。スープには生の鶏を使い、100度になるまで煮込む。これらの麺類に「小食」と呼ばれるおかずを追加することができ、イカのすり身を湯葉で巻いて揚げた「墨魚腐皮巻」や麻辣醤(マーラーじゃん)をのせたオクラ「芥末秋葵」(以上26香港ドル)なども用意した。
陸さんは「安定した同じ味をいつでも提供できることが大切」と話し、「将来的には、高麗人参やツバメの巣などの高級食材を使ったメニューにも挑戦してみたい」とも。1日500杯の売り上げを目指す。
営業時間は11時~20時30分。日曜定休。
●=石へんに勘。