世界で最も知られるオークションハウス「サザビーズ」は7月27日、香港ランドマークチャーターに新メゾン「SOTHEBY’S MAISON」をオープンした。
同メゾンは広く一般に公開し、2フロアを使った2万4000平方フィートに展示スペースと直接販売するサロンを設ける。ギャラリーの枠を超え、グランドフロアは美術館のような空間で「没入感のある美的体験」ができ、愛好家だけでなく、初めてアートに触れる人にも楽しんでもらえるよう、さまざまなキュレーションを施した。
1744年に設立されたサザビーズは、オークションを通じて美術品や高級品の入手と所有の促進を図っている。現代美術、近代・印象派美術、オールドマスター、中国美術品、宝飾品、時計、ワイン・蒸留酒、デザイン、コレクターズカー、不動産など、世界40カ国、70カテゴリーに及ぶスペシャリストのネットワークを持ち、香港はアジア太平洋地区の中心としての役割を担っている。サザビーズのアジアにおけるオークション売上高は、ほかの地域のコレクターを大きく上回り、アジアビジネスに注力している。
1階のサザビーズ・サロンでは、20近いカテゴリーから8000万年の歴史を超える200点以上の品々を展示する。5,000香港ドル~5,000万香港ドルの値札が付いており、年間を通して即購入できる。7つのサロンに分かれた5つのスペースがあり、3つのサロンはラグジュアリーに特化。最も人気のあるハンドバッグ、ビンテージ時計、独立系デザイナーズ・ジュエリーの数々を展示する。
先史時代のマンモスの頭蓋骨(371万8,000香港ドル)、侍の甲冑(かっちゅう)(71万5,000香港ドル)なども展示しているほか、6年前に発表されて以来、オークションで部分的にシュレッダーにかけられ、バンクシーの作品の中で最も価値のある作品とされる「風船のない少女」、奈良美智さんの作品群から「Agent Orange (in the Milky Lake))」なども展示している。
1階からつながる階段を下りると、グランドフロアに設けられたエリアは場内の明かりを抑えた、6メートルの天井高を誇る空間。「質感やサウンドにもこだわった」という空間が「中環の喧噪(けんそう)とは隔絶した世界観」を提供する。9月11日まではオープニング展「Bodhi」として、仏教美術の傑作を集めた。1世紀から3世紀ごろにかけてクシャナ朝時代に開花したガンダーラ美術の仏像や、栄華を極めた明朝、南北朝の激動時代の北斎の仏陀立像、仏教寺院や仏像が増えた宋の時代の観音菩薩(ぼさつ)を、木彫りの繊細さを維持したまま展示している。
サザビーズアジアのニコラスチャウ(Nicolas Chow)会長は「アートは情熱と好奇心に火をつける旅。希少な本であれ、アフリカの仮面であれ、宝石であれ、一つ一つのオブジェが見る人の心を揺さぶる」と話す。サウンドトラックにこだわった部分についても、「音楽には感情を高める力がある。芸術作品の知覚はセッティングや感覚的な体験によって変化する。サザビーズでは、美術品との関わり方を豊かにする多感覚的な体験の創造に努めている」とし、「私たちの努力で、アートがより深いレベルで共鳴し、鑑賞者一人一人の中に新たな視点と感情を呼び起こすような空間に育てたい」と続ける。
営業時間は11時~19時(日曜は18時まで)。入館無料。