李家超(John Lee)行政長官が10 月16日、就任後3度目となる施政方針演説を行った。
2024年の香港経済は、主力の産業である観光業が回復の兆しを見せているが、「北上消費」が大きく影響して内需不足よる経済の低迷が大きく影を落としている。そこで全方位にさまざまな政策を推進することで香港経済の復活を図ろうとしている。
政治面では、2020年の香港国家安全維持法、2024年に基本法第23条に基づく国家安全維持条例法案が施行されたこともあり、中国が主導する新しい国際調停機関「國際調解院(The International Organization for Mediation)」の本部設置が決まっており、粛々と準備を進めるとしている。
経済面では、観光業に関するワーキンググループ「發展旅遊熱點工作組(The Working Group on Developing Tourist Hotspots)」を立ち上げ、観光業を活性化させる方策を考える。行政会議が5月24日に批准した大嶼山(Lantau Island)南部の開発計画「南大嶼生態康樂走廊(South Lantau Eco-recreation Corridor)」、「啓徳体育園(Kai Tak Sports Park)」を活用したイベント、中東とアセアン諸国からの観光客の誘致も進める。これに関連して、カンボジア、ラオス、ミャンマーからの数次ビザの審査基準を緩和し、有効期間を2年から3年に延長する。
香港は2008年にアルコール度数30%以下の飲料に対する酒税が撤廃されたが、逆に30%以上のアルコールは輸入価格に100%の酒税がかけられている。税が撤廃されたことは大きく、ワインビジネスが香港で成功した。この経験を踏まえ、200香港ドル以上で輸入される蒸留酒などに対する関税率は 100%から 10%に引き下げることを決めた。一方、200香港ドル以下で輸入される蒸留酒などに対する関税率は据え置かれる。この政策は即時施行する。
今回の政策は、アルコール度数ではなく価格で税率が左右されるが、香港では日本産ウイスキーの一部は投資対象になるほど人気が高いが、新政策により日本のウイスキーが香港でより流通する可能性が高まる。
さらに、高度1000メートル以下の低空域で展開される経済活動を指す「低空経済」についてはドローンによる貨物輸送(デリバリー)、測量などが想定されているが、低迷する経済に関するワーキンググループ「發展低空經濟工作組(The Working Group on Developing Low-altitude Economy)」を立ち上げ、必要なインフラ整備や規制の緩和など必要な措置は何か研究と検討を行う。
ほかにも、教育、人材に関する「教育、科技和人才委員會(The Committee on Education, Technology and Talents)」、高齢化社会を念頭においた「促進銀髮經濟工作組(The Working Group on Promoting Silver Economy)」というワーキンググループを設け、経済のてこ入れを図る。
海運業の中心を担うコンテナ船だが、香港で輸出入の能力増強やプロモーションを図るため、「香港海運港口發展局(the Hong Kong Maritime and Port Development Board)」を新設する。
住宅では2025-26年度から2029-30年度の間に18万9000戸の公営住宅を建設する。これは2022-23年度から2026-27年度と比べて80%増加させることになる。政府は公営住宅に入居できるまでの待機期間が過去2年間で6.1年から5年半になったが、将来は4年半になるとする。
ほかにも、地域的な包括的経済連携(RCEP)の早期加入も目指すほか、日本でも話題になる最低賃金について、香港政府も毎年見直す制度の導入を計画していることにも触れた。