
香港交易所(HKEx)は創立25周年を迎える6月27日を前に、上場セレモニーの時に使われていた銅鑼(どら)を搭載したトラックの巡回を6月20日に始めた。これは、香港が世界の金融センターの中心として機能してきた理由の一つにHKExの存在があることを、市民に広く知ってもらうための初の試み。
HKExは、コロナと政治不安の影響により新規株式公開(IPO)がここ数年低迷しており、どのようにして魅力的な証券所にしていくのかを課題としてきた。その中で、まずは創立25周年の節目を利用して、香港市民にHKExへの理解を深めてもらうことから始める。
HKExは香港が世界の金融センターとしてあり続ける重要な位置を占めている。歴史をたどると1980年に4つあった取引所が合併して香港聯合交易所(SEHK)となり、1986年に交易広場(Exchange Square)にトレーディングホールをオープン。1996年には端末を導入し、手を使った取引がなくなった。2000年3月にSSHKと別の2つの取引所と合併してHKExが誕生した。2014年には上海と2016年には深センの市場と相互取引ができるようになるなど、中国へのゲートウェーとしての機能を強化してきた。
HKExには大規模優良企業向けの「メインボード」と中小企業向けの「GEM」の2種類のマーケットがあり、メインボードは「プライマリー」という通常の新規上場と「セカンダリー」という、既に東京やニューヨークなどに上場していて香港にも追加で上場する市場を用意する。企業の種類としては、金融、IT、不動産、消費者サービス系の企業が多いのが特徴。香港・中国系の企業の上場が多いが、日系企業も上場しており、2011年にSBIホールディングスが香港預託証券として上場し(2021年に上場廃止)、翌2012年にダイナムジャパンホールディングスがプライマリーに上場した。その後、ユニクロを運営するファーストリテイリング、本間ゴルフ、香港日清などが上場している。さらに、プラダ、コーチ、ロクシタンなども香港で上場するなど、国際色豊かな証券市場となっている。
今回の特徴は、製造した巡回トラックを通じて香港の金融市場の発展について学ぶことができる機会を提供するなかで、HKExの象徴でもあった銅鑼を載せている点。電子取引が主流になったため2017年に立会場は廃止されたが、それまでは、上場セレモニーが行われる時には、この銅鑼を5回鳴らす習慣があった。日本では、5回は「五穀豊穣」を意味すると言われるが、香港では、「5」という数字が縁起が良いとされることが関係しているという説や五行思想(木・火・土・金・水)、成功を意味する「五福臨門」(長寿・富貴・康寧・好徳・善終)など、5という数字が調和や繁栄を象徴することが多いといういわれもある。
今は見ることができなくなった銅鑼と一緒に撮影できる貴重な機会で、「上場を果たした社長のような気持ちになれる構図」で写真を撮ることもできる。
ほかにも、香港交易所展覽館(現香港金融大会堂 HKEx Connect Hall)に展示されている展示品をトラックで見られるようにするほか、過去の写真や映像、フロア・トレーダーが当時着用していた赤いベストも公開。加えて、インタラクティブなゲームも用意し、参加者は香港に関する知識を試すことができる。
巡回ルートは9カ所で、6月23日=中環(Central)の香港摩天輪(Hong Kong Observation Wheel)、24日=●魚涌(Quarry Bay)の海湾街(Hoi Wan Street)、25日=沙田(Sha Tin)の排頭街行人天橋口(Pai Tau Street near footbridge)、26日=将軍澳(Tseung Kwan O)の寶琳駅C出口(Pa Lam Station Exit C)、27日=湾仔(Wan Chai)の鐘紫荊広場(Golden Bauhinia Square)、28日・29日=啓徳体育園(Kai Tak Sports Park)の美食海湾(Dining Cove)、30日=葵涌(Kwai Chung)の葵涌広場(Kwai Chung Plaza)、7月2日・3日=尖沙咀(Tsim Sha Tsui)の天星碼頭(Star Ferry Pier)を予定する。
●=魚へんに則。