ミシュラン星付きシェフ、ヴィッキー・ラウ(Vicky Lau)シェフによる新たなチャイニーズビストロ「JIJA by Vicky Lau」が11月18日、香港・尖沙咀の新設ホテル「Kimpton Hotel」のロビー階に開業した。
雲南省をはじめとする中国南西部の食文化に着想を得た同店は、ラウシェフがこれまで手がけてきたファインダイニングとは異なるり、「素朴で力強い味わいを追求する新たな挑戦」になるという。
香港を拠点とするホスピタリティーグループ「Leading Nation」が経営する。同社は「Cristal Room by Anne-Sophie Pic」「WAGYUMAFIA」「The Merchants」など、ミシュラン星付きや話題性の高い飲食店を多数展開しており、JIJAもその一つに位置づける。
ラウシェフは、ミシュラン2つ星の「TATE Dining Room」と1つ星の「MORA」を率いる香港を代表する女性シェフ。2015年には「Asia’s Best Female Chef」に選ばれ、アジア初の女性2つ星シェフとしても知られている。JIJAは、ラウシェフが旅先で出合った雲南の食材や料理に感銘を受け、「家庭で作りたいと思える料理」をテーマに構想したという。
JIJAの店名は、広東語の口語「●●○○(ジージージャジャ)」に由来する。「ピーチクパーチク」「ぺちゃくちゃ」といった日本語に似た意味で、人々が集まり、食事を通じてつながる「にぎやかな会話」を象徴している。ラウシェフは「完璧さよりも、ポジティブなエネルギーと味、喜びを大切にしたい」と話す。
入居するキンプトンホテルは高層階のロビー設計のため、同店も15階に店を構える。店内は50席のみのコンパクトな構成で、6人用の個室も備える。インテリアは雲南の山岳地帯や少数民族の織物文化から着想を得ており、豊かな伝統文化と色彩豊かな民族衣装をもつミャオ族の刺しゅうや藍染めの色彩を取り入れた温かみのある空間が広がる。大きな窓からはライオンロック(獅子山)やビクトリアハーバーなどの都市景観を望め、昼夜で異なる表情を見せる。
料理は、雲南の野生キノコや発酵野菜、茶葉、豚脂など、地域色豊かな食材を生かしたメニューが中心。代表的な一品「季節のキノコサラダ」は、マツタケやアミガサタケなどの希少なキノコを使い、生・漬物の両方をスパイシーなドレッシングで仕上げる。雲南名産のプーアル茶でいぶした「三黄鶏の燻製(くんせい)」や、豚脂で炒めた「雲南式チャーハン」などの「力強い味わい」が特徴だという。
厨房を率いるのは、2024年に「SCMP 100 Top Tables Rising Star Award」を受賞した若手ショーン・ユエン(Sean Yuen)シェフ。ミシュラン3つ星の「Caprice」や「Dolos」「Hue Dining Room」で経験を積み、「酸味・辛み・しびれ」が織りなす中国南西部の味覚を、「経験で得たバランスで表現する」という。
デザートでは、四川こしょうのガナッシュを添えたチョコレートスフレタルト「朱古力舒芙蕾撻配花椒朱古力醤(じゃん)」や、パリ・雲南と名付けられたシュー菓子「雲南巴黎」など、中国とフランスの菓子文化を融合させた創作スイーツをそろえる。ペアリングには中国茶を中心としたティーセレクションを用意し、プーアルや白茶など、発酵・熟成によって風味が変化する茶葉の魅力をワインのように解説する。
ラウシェフは「いろいろなものが行き交う都市である香港に、もっと地域色豊かな食文化を根付かせたい」と話す。尖沙咀という観光・ビジネスの中心地にありながら、雲南や貴州、四川などの地方の味を伝えるJIJAで、「香港の食の多様性をさらに広げたい」と意気込む。
ランチとディナーの2部制。営業時間は、ランチ=12時~15時、ディナー=18時~21時(金曜・土曜は21時30分まで)。週末にはアフタヌーンティーセットも提供する。
●=口へんに支。○=口へんに査。