2025年香港経済新聞の年間PV(ページビュー)ランキング1位に輝いたのは、LABUBUのミニサイズ発売を取り上げた記事だった。
LABUBUは、香港人デザイナー Kasing Lung(龍家昇)さん が北欧神話を着想に生み出したキャラクターで、中国本土のトイメーカー POP MART が商品化し、2024年末に販売開始。今年8月28日にミニサイズを発売したことでさらに話題を呼び、LABUBUブームは株価をも動かすなど話題をさらった。しかし、その熱は長くは続かず、香港では秋には人気の失速や価格への懸念から株価が急落するなども大きな話題となった。
ランキングは今年1月1日から12月10日までに配信したヘッドラインニュースの PV を集計したもの。上位10位のランキングは以下の通り(カッコ内は掲載日)。
1. 香港人デザイナーが生んだLABUBUにミニサイズ登場 世界旋風止まらず(9/5)
2. 香港のオクトパス、日本でも利用可能に 最短で第3四半期から(3/7)
3. 香港政府、2026年の祝日発表 旧正月など「攻略法」で大型連休が多数に(5/19)
4. 香港映画「トワイライト・ウォリアーズ」、日本での興行収入が1億円突破(2/13)
5. 香港の14人に1人が資産2億円以上 シティバンク富裕層調査で明らかに(11/23)
6. 香港・尖沙咀で「ちいかわ」大型特別展 飲茶コレクションも初登場(8/2)
7. 香港の有名店「海皇粥店」が突如、全店閉鎖 33年の歴史に幕(5/16)
8. 香港のかゆ・麺店の老舗「羅富記」が閉店へ 77年の歴史に幕 (1/26)
9. 香港でも「ちいかわ」旋風 第2弾発売にも行列、転売防止に合言葉も(4/17)
10. 香港でキャセイ特別機が低空飛行 啓徳開港100周年記念で(4/1)
2位には、香港の交通系ICカード「八達通(オクトパス)」が日本で利用できるようになることついての記事がランクインした。PayPay(ペイペイ)との連携で実現し、すでにサービスは始まっている。今年は地震のうわさなどがあり夏は訪日を控える人も多かったが、日中問題の渦中の現在でも訪日の勢いは衰えず、日本に行くことを「返郷下(里帰りする)」と表現するほど日本旅行が当たり前となっている香港市民にとって朗報となった。
3位には年間ランキング1位になることも多い「香港祝日発表」が入った。香港に在住の日本人だけでなく、香港でのビジネスを展開する人たちにとっても祝日について検索する傾向がありアクセスが伸びた。
4位は日本でも順調な興行成績を獲得した「トワイライト・ウォリアーズ」がランクイン。最終的に日本で最終的に興行収入5億円を突破するヒットとなり、近年の香港映画としては異例の成功を収めた。香港・啓徳(カイタック)の商業施設や九龍城砦跡地で開催された展示イベントには日本からの観光客が多数訪れ、「聖地巡礼」的な盛り上がりを見せている。
5位には、もともと富裕層も多い地域である香港について、香港の14人に1人が資産2億円以上を持っていることが明らかになった記事。背景には不動産価格の高さもあるが、税制優遇と投資環境の強さなども影響している。
6位・9位には「ちいかわ」関連がランクイン。ビクトリアハーバー沿いのK11 MUSEAプロムナードには、高さ約9メートルの「ちいかわ」オブジェなども登場した。香港限定の「飲茶」コレクションも話題となるほか、旺角では「ちいかわラーメン出店」などの動きが続いている。
7位・8位は香港老舗閉店の話題。今年も有名な粥(かゆ)店「海皇粥店」や「羅富記」が閉店した様子は多くの香港メディアでも話題となり、最終日に向けて老舗の味を惜しむ声が続いた。
10位には、香港で現在はクルーズターミナルとなった啓徳開港100周年記念でキャセイ特別機が低空飛行を運行した話題。約20分の特別飛行は、啓徳スタジアム通過の際、巨大スクリーンに旧啓徳空港の歴史的な映像が映し出され、その横を旅客機のシルエットが通過する仕掛けで、会場は大きな歓声に包まれた。会場にいない人達も香港各地で多くの人が空を見上げ、遠い過去の空港に思いをはせた。
10位以内にはランクインしていないものの、11位には今年一番の香港のニュースとなってしまった11月26日に発生した大規模火災での香港人の現場の様子をレポートした記事もランクインし、年末に向けて10位以内に入る可能性も高い。ほかにも、12位には、昨今の異常気象によるニュースも入り、2025年を通じて、台風によるシグナル8発令や黒雨警告によって社会が「一時停止」した回数は合計6回と過去最多水準だったことも報じた。
香港市民が中国本土に出かける「北上消費」行動には変化がなく、依然として香港経済は低迷、空洞化していると言われる一方、差は見られるものの復活を遂げ、にぎわう飲食店なども見られ、勝ち負けもはっきりしてきている。香港への観光客の数字を見ても、通年で約4700万~4800万人規模と見込まれており、前年比およそ10~12%程度の増加が予想されているなど明るい話題もある。
一方、香港も日中問題の大きな影響を受け、在港日本企業の中には、香港市場について本社とのパーセプションギャップの拡大に悩む企業もある。しかし、先週末開催された音楽フェス「Clokenflap」には多くの日本人アーティストも登場した。日本ブランドの出店も続き、年末年始に日本を訪れる予定の人も多い。香港にとっての日本はもはや「日常」であり、香港人が日本を好きであることには変化はない。引き続き香港の様子をニュースとして伝え、日本と香港との関係を中心にさまざまな視点で2026年も取材し、情報を伝えていきたい。