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香港の老舗茶樓「新龍城茶樓」が閉店へ 牛池湾村再開発で

蒸籠が並ぶカウンターで好みの点心を選ぶ客

蒸籠が並ぶカウンターで好みの点心を選ぶ客

 香港の九龍半島、牛池湾村にある飲茶店「新龍城茶樓」(67B Lung Chi Path, Ngau Chi Wan)が4月30日で閉店する。「眠らない茶樓」が67年の歴史に幕を閉じる。政府による再開発計画で村の取り壊しが進む予定で、長年地域に親しまれた茶樓も、その影響を受ける。

店の外観

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 牛池湾村は九龍東部の黄大仙区に位置し、乾隆(1736~1795年)時代には既に集落が存在し、200年以上の歴史を持つとされる。南の新蒲崗や鑽石山の商業・住宅区と隣接し、旺角や尖沙咀などの中心地へのアクセスも良い。元々は農村地帯だったことから「牛尿湾」「牛屎湾」とも呼ばれたと伝えられるが、後に「牛池湾」と改称された。戦後に多くの移民が定住し、トタンや木板で建てた土地権利のない暫定住宅「寮屋」が「牛池湾郷」を形成した。

 1970~80年代に、政府が地下鉄路線や住宅建設を進める中で範囲は縮小し、現在の斧山道から清水湾道の「牛池湾郷」牌楼の周辺に統合された。同村は現在も客家系の住民が多く、文化や伝統が今も色濃く残っている。以前東村と西村の境界には信仰される神「社公」を祭っていたほか、毎年、旧暦2月ごろには4日間にわたり、香港の無形文化遺産「三山国王誕」が盛大に行われる。麒麟の舞のほか、誕生日当日の正午に行われる「神功戯」の無料上演もある。廟内で粤劇を上演する形式は、一般的には屋外の仮設舞台で行われることが多い香港でも比較的珍しい。

 一帯では近年、高層住宅の建設が進む一方で、昔ながらの香港の風情を感じることができる貴重なエリアの一つとなり、小規模な商店や市場が並んでいる。牛池湾郷露天市場は、露天市場ならではの人情味あふれる雰囲気も特徴で、早朝から住民があいさつを交わしながら買い物する様子が見られる。

 再開発計画は、政府による「2019年施政報告」で発表され、対象地域には茶果嶺村や竹園聯合村も含まれている。「牛池湾村」は入りくねった路地に並ぶ家も老朽化が進んでおり、政府は段階的に建て替えを勧めてきた。しかし、一部の住民は再開発に反対しており、伝統的なコミュニティーの維持を求める声も強い。

 牛池湾村だけで2.2ヘクタールあり、約3個分のサッカーコートに相当する。2030年代を目途に再開発完了が予定されており、約2700戸の住宅と商業施設が提供される見込み。一方、村内にある文化遺産も取り壊される予定で、1912年から1913年にかけて建てられた道教寺院「萬佛堂」などを除き、村内の多くの建築は解体されることになる。

 今回閉店する「新龍城茶樓」は1959年に開業し、村内で最古の茶樓。店内には室内と室外の席があり、客が自ら動き、蒸籠が並ぶカウンターで点心を自ら選ぶスタイル。コロナ禍以降、少し短くはなったものの、早朝から夜中まで営業を続け、昔ながらの茶樓の雰囲気を色濃く残しており、現在の店主は3代目となる。日が明けない早朝から営業を始め、深夜12時過ぎに既にお茶をいれ、点心もできることを楽しみにしている客もいる。点心職人は毎日深夜1時に仕込みを始め、手作りの点心を提供してきた。機械を使わずに伝統的な製法を守っている。

 加えて、「以雀會友」という香港の伝統文化を保つ数少ない茶樓でもある。かつては朝早から「雀友」が鳥籠を鉄皮屋根に掛け、トタン屋根の下で鳥のさえずりが響く中で飲茶を楽しむ光景が見られた。

 定番メニューの焼売(シューマイ)や蝦餃(エビ蒸しギョーザ)のほか、臘腸や干しエビなど入りの粽(ちまき)のような糯米包、フカヒレやタケノコなど入りの魚翅餃など、現在では珍しくなった伝統的な点心も並べる。

 牛池湾村の再開発計画に合わせて同店も閉店するが、店主や点心職人たちはこれを機に引退を考えているという。SNS上では閉店を惜しむ常連客の投稿が相次ぐ中、「移転する計画はない」との発表もあった。

 営業時間は、朝食・昼食=4時~14時30分(4月30日まで)、ディナー=16時30分~23時30分(3月31日まで)。

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