日本料理店の勢いがまだまだ止まらぬ香港で11月18日、中環のスタンレーストリート(3.F,Stanely11,11Stanley Street,Central TEL 2327-4482)に地元の食材を使って懐石料理を提供する「料理人上田UEDA」がグランドオープンした。
シェフの上田建二さんは愛媛の出身。「懐石料理を提供する店はあるが、日本から直送のものにこだわり、提供価格が高く、堅苦しいイメージがある」という市場の見方に着目。「身近な素材を使うことで懐石料理の品々をアラカルトでもオーダーできるようにし、日本料理の神髄を知ってもらえる環境をつくりたい」と考えた。「高い食材が良いのではなく、手間暇かけることに意味があることを伝えたい」と上田さんは話す。
八寸は5種類(138香港ドル)と8種類(198香港ドル)を用意。酒のさかなとして、海のものと山のものを合わせて出すことが決まりとされる献立は、秋と冬を感じさせる品々で構成した。「いわしの有馬煮」は、味わい深さを出すために唐辛子ソースでじっくりと5時間煮る。「たこの柔煮」はしょうゆや砂糖、酒、大根などと一緒に4~5時間に混むことでかみ応えの柔らかさを引き出すことができる。
「ピータンは直観で、懐石料理にも使いやすいと思った」と話す上田シェフは、新鮮なアワビの肝やピータンの黄身などとしょうゆやみそと混ぜ合わせたソースをピータンのゼリー状の白身とアワビの上にかけた一品。懐石料理を作る技術を使いながらも、ローカルのもので4~5時間掛けて完成させ、香港の食材の中で和食と相性のいいものとして紹介する。
刺し身も地元のものを使う案もあったが、手に入る魚の種類が異なることもあり、日本から直送のものを使う。食材などをすりつぶし、だしでのばしたすまし汁である「すりながし」は毎日ローカルのマーケットで良いものを見定め、黄色や緑などの色のバランスも考えて、わんに盛り付ける。アボカド、フルーツなども使う点も特徴だ。
茶名も持つ上田さんは、店内で抹茶もたてる。京都宇治産の青嵐(せいらん)を使った抹茶に季節のお菓子も添えて提供する(78香港ドル)。抹茶も伝統的な楽しみ方だけでなく、同店ではこの青嵐を使って「抹茶ビール」(88香港ドル)も用意した。香港で日本産として親しまれる「サントリープレミアムモルツ」に抹茶の粉を混ぜることで、グラスを口に近づけると本物の抹茶の香りが広がるドリンクに仕上げた。
価格は、9皿=580香港ドル、13皿=780香港ドル。「事前に予約を頂いた方が、よりしっかりと準備ができる」としながらも、予約がない人でも楽しめるように早朝から仕込みをするという。
営業時間は12時~23時。