2014年の雨傘革命の事象が色濃く残り、各方面で中国と香港の「分断」、「矛盾」がキーワードとなった2015年を、香港経済新聞が選んだ10大ニュースで振り返る。
1. 行政長官選出のための普通選挙法案が想定外の形で否決
2017年に実施される行政長官選挙は普通選挙で実施されることになっていたが、その選挙制度法案の内容が民主派に不利だったことが2014年の雨傘革命の引き金だった。同法案の採決が6月18日に実施された際は、否決されることがあらかじめ予想されていたが、親中派が策を弄(ろう)して議場から突然退場。議会規定によって流会にならず賛成8、反対28で否決されるという茶番劇が起こった。
2. 深セン市民は香港への訪問は週1回に制限される
中国政府は4月13日から、広東省深セン市の戸籍を持つ市民の香港訪問を週1回に制限した。何度も訪れることのできるマルチビザを持つ深セン市民が粉ミルクを中心とした日用品を買い占めて中国本土で転売。香港内では品不足に陥り、価格が高騰したためだ。制限後は小遣い稼ぎにと香港人が深センで転売しているという事象もあらわになった。
3. 香港メディア、業界再編
4月1日、香港政府は無料地上波の「亜洲電視(ATV)」の放送免許を更新しないことを決定した。7月12日から20日までの約1週間で「新報Hong Kong Daily News)」「成報(Sing Pao Daily News)」「忽然1周(Sudden Weekly)」が相次いで休刊に。12月11日には中国の電子商取引最大手のアリババが香港最大の英字媒体「South China Morning Post(南華早報)」を買収するなど、香港メディアにとって大激動の1年だった。
4. HSBCが創業150周年を記念して150ドル紙幣を発行
民間企業でありながら発券銀行である香港上海銀行(HSBC)は、創業150周年を記念して額面150ドルの記念紙幣を発行した。1枚つづり、3枚つづり、35枚つづりの3種類を発売、転売を狙うたくさんの香港人が応募した。35枚組は販売価格が高すぎたせいか購入者が少なく売却益がマイナスの人もいたようだ。
5. インターネットの23条、立法会外では爆発騒ぎも
著作権保護に関する法律で、作品の2次利用などに関する「2014年版権(修訂)条例草案」。香港ではまだ成立していないが、国家安全法(昔の治安維持法に近い)の成立を規定した基本法第23条の「ネット版」であることから、表現の自由を侵害するとして市民が反発。デモのほか、12月9日には立法会前のごみ箱が爆発し青年が逮捕される事態にまで発展した。
6. 日系企業の香港進出、勢い留まらず
海外進出を進める日本企業が市場拡大を狙う都市の一つ、香港。トレーニングジムで急成長を遂げているライザップが6月8日に香港に進出したほか、若者のファッションを牽引してきた「SHIBUYA 109」がショッピングモールハーバーシティに12月10日に開業。「三田製麺所」「ナポリス」「BAKE」など飲食も中心に、今年も多くの日系企業が香港進出を果たした。
7. 老人ホームで介護者を裸にし、屋外に整列させて入浴待ちをさせる
有名な老人介護施設である劍橋護老院(Cambridge Nursing Home)の大埔(Taipo)支店では、自分の力で入浴できない介護者12人に対し、3階のベランダで衣服を脱がせ、半裸または全裸のまま入浴の順番が来るまで立たせていたという事件が発覚。香港社会が震撼(しんかん)した。
8. 鏞記酒家、お家騒動で清算へ 老舗の閉店も相次ぐ
70年以上の歴史を誇る中華料理店「鏞記酒家(Yung Kee Restaurant)」は兄と弟で経営権を巡って裁判となり、店を離脱した兄側が勝訴。経営している弟側は兄が所有する株式45%を買い取るか清算しなければならず、最終的には清算することになった。「上海一品香」「民園麺家」など老舗と呼ばれる店も、後継者問題などから姿を消していくことになった。
9. W杯予選、香港サポーターが中国国家にブーイングで騒動
2018年W杯ロシア大会のアジア2次予選で香港代表のサポーターは対ブータン、カタールなどのホームゲームで中国国家斉唱時にブーイング。国際サッカー連盟(FIFA)は政治利用を理由に香港サッカー協会(HKFA)に警告。HKFAはサポーターに呼び掛けたが防ぎきれず罰金刑が科された。その後の対中国戦はブーイングの代わりに「BOO」と書かれた紙が掲げられた。
10. モデルのアンジェラ・ベイビーが黄暁明と約40億円婚
モデルのアンジェラ・ベイビーさんが中国のトップ俳優、黄暁明(ホアン・シャオミン)さんと10月に12歳差婚。中国版ヴォーグなどのファッション紙でも記事となった。アンジェラ・ベイビーさんはディオールのドレス、ショーメの王冠やネックレス、5.53カラットのリング、黄暁明はトム・フォードのスーツを着用。72卓に500人の招待客、200人の警備員、シェフ100人といわれ、上海市内には高級マンションを購入したと報じられるなど一連の金額は2億人民元=約40億円といわれている。