香港のアカデミー賞にあたる「第35回金像奨(香港フィルムアワード)」が4月4日、香港文化中心(Cultural Centre)で行われ、最優秀作品賞には蔡廉明(アンドリュー・チョイ)プロデューサーと伍嘉良プロデューサーの『十年/Ten Years』が選ばれた。
香港では毎年3月下旬からの約1カ月間、香港影視娯楽博覧(エンターテインメント・エキスポ)が開催され、「香港国際映画祭」「香港国際フィルマート」「香港アジアンポップ・ミュージック・フェスティバル」などの各種イベントを展開している。金像奨は香港映画業界の中で最も重要な位置を占める。
最優秀作品賞にノミネートされたのは「十年」のほか、「五個小孩的校長/Little Pig Master」「智取威虎山The Taking Of Tiger Mountain」「葉問3/Ip Man 3」「踏血尋梅/Port Of Call」の5作品。
「十年」はインディー系の単館上映だった。2025年の架空の香港を描いた「十年」は、北京語が公用語となり、制度が変わったことで、広東語を使うタクシードライバーが戸惑う様子や、香港独立運動で警官に殴られるシーンなどがあることから雨傘革命や今の香港を思い起こさせることも話題になり、ロングラン上映されたほか、無料上映会も開かれるヒット作になった。そうした背景を踏まえ、今回の最優秀作品賞本命だろうという声も大きかったことから、中国国営放送(CCTV)や中国でのネット配信する権利を持っていた企業が今回の放送を見送っていた。
蔡プロデューサーは「この受賞は、香港にはまだ希望があること言うこととして意味があり、私たちは勇気を持って製作を続けることを思い起こさせてくれる。皆さんに見てもらって感謝している」と話す。
伍プロデューサーは「北京(=中国政府)の心情について聞かれてもそんなことは関係ない。これは香港人によってつくられた映画だから。私たちはこの気持ちを香港人と分かち合い、香港の将来について人々が考えてくれると思う」と話した。
主演男優賞は、郭富城(アーロン・クオック)さん、主演女優賞は中国の女優の春夏(ジェシー・リー)さんが初受賞となった。助演男優賞は白只(マイケル・ニン)さんが受賞し、同時に最優秀新人賞も獲得した。助演女優賞は金燕玲(エレイン・ジン)さんが受賞。受賞した俳優はすべて「踏血尋梅」からで、1つの作品が個人賞を独占する形となった。
香港映画界において近年の日本人は音楽部門で活躍しており、最優秀映画音楽スコア賞で今や金像奨の常連に近い存在となった岩城太郎さんが「太平輪:驚濤摯愛/The Crossing Ⅱ」でノミネート。「捉妖記/ Monster Hunt」で種田陽平さんも最優秀美術指導賞にノミネートされていたが、残念ながら両者とも受賞には至らなかった。