世界最大手のIT企業、アップルの電子決済サービス「Apple Pay」が7月20日、香港でも始まった。
加入するには、香港上海銀行(HSBC)、恒生銀行、中国銀行(香港)、スタンダード・チャータード銀行、星展銀行(DBS)の5行から発行されているVISA、マスターカード、アメリカン・エキスプレスの3社のクレジットカードが必要だ。
アップルペイは2014年10月、アメリカで供用開始。基本的に店に設置された端末にアップルから発売されたデバイスを掲げるだけでOKというもの。アメリカの後は、イギリス、カナダ、オーストラリア、中国、シンガポール、スイス、フランスでサービスを展開しており、香港は9番目の導入エリアとなった。
対象となるデバイスはiPhone、iPad、Apple Watchの3つで、それぞれにプリインストールしてあるアプリの「Wallet」を使って自身のクレジットカードを登録する。クレジットカードはサインを行うが、その代わりに指紋認証行うため安全性が高いとされる。iPhoneを紛失したときは遠隔操作で利用を停止できる。各行は早速、キャッシュバックなどを含めたキャンペーンを実施して顧客獲得に動き始めた。
サービスを利用できる加盟店は40社。セブン-イレブン、アピタ、元気寿司、豊澤(Fortress)、ケンタッキーフライドチキン、マクドナルド、百佳(Parknshop)、Sasa、スターバックス、パシフィックコーヒー、ユニー、屈臣氏(Watsons)、恵康(Wellcome)、ピザハット、美心MXなど。UBERでのサービスも予定している。
アップルは、巨大市場の中国本土を取り込むため、香港に先んじて、中国で銀聯(Union Pay)と組んで2016年2月18日にサービスを始めた。しかし、中国ではアリババのグループ企業のアリペイと騰訊のWe Chat Payがすでに市場を独占している。銀行が介在すると、個人経営のような小さな店が申し込んでも認められないケースがある。そのため、アップルペイが利用できる店に制限がでる一方、アリペイなどはプリペイドで完結させ銀行を介さず、店主1人のような店でも簡単に加入できるため、あらゆる店に幅広く浸透した。しかも店は客のQRコードを読み取るだけというアップルペイ以上に利便性が高いことから、アップルのブランド力を持ってしても中国では苦戦している現状がある。
香港では中国と比べて信用取引によるクレジットカード文化が発達しているが、一方で1997年から電子マネーの八達通(Octopus)が流通。この約20年間で累計3100万枚が発行された。単純計算で香港市民1人4.4枚持っていることになり(15歳~64歳の所持率は99%)、アップルペイが利用できる店でもすでに八達通が利用できるところがほとんど(八達通の読み取り機械は7万3000台が香港にある)。八達通はMTRやバス、一部のタクシーいった交通機関まで利用できるという利便性の高さから香港市民にとっては必需品として深く浸透しており、香港市場でシェア拡大に注目が集まる。