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香港の飲茶老舗「蓮香楼」の建物が売却へ オフィス・ホテル建設予定で申請とも

香港の老舗飲茶が続けられなくなるのではないかと不安の声

香港の老舗飲茶が続けられなくなるのではないかと不安の声

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 中環にある飲茶の老舗「蓮香楼(Lin Heung Tea House)」(160-164 Wellington Street, Central, Hong Kong TEL 2544 4556)の建物のオーナーが変わり、2019年に建物の建て替え工事が始まると政府へ申請書が提出されていることから、近いうちに経営判断があると香港で話題になっている。同店は、現在では数少ないワゴン式スタイルの飲茶が楽しめる店として知られ、昔ながらの雰囲気で食事をできることから、地元の人のみならず観光客の間でもよく知られる店である。

蓮香楼の外観

 蓮香楼は1889年、広州市西部に「連香楼」として開業。「蓮蓉」という蓮の餡(あん)を使ったお菓子で有名となり、後の広東スタイルの月餅の原型になったともいわれる。「連」の上に草かんむりを付けて「蓮香楼」と改名し、1908年、広州で「茶楼王」と呼ばれていた譚新義に買収され、1910年に「蓮香大茶楼」とさらに改名した。資本力が増した同社は1918年に香港にも進出し、1926年には中環の皇后大道中(Queen’s Road Central)と旺角(Mong Kok)の2店を構えるまでになったという。

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 1949年に中華人民共和国が成立し、その3年後の1952年に広州の店が国の管理下に置かれたため、香港の経営は独立する形となった。広州側は中国当局によって改名を余儀なくされたり、一時期はお菓子の部門は運営を継続したが、レストランの方は営業停止になったりするなど激動の歴史を経て、1984年、再び飲茶を楽しめる店として復活している。

 香港の蓮香楼は、旺角店は閉じ香港島の経営は続け1980年から現在地のすぐそばの117 Wellington Streetに店を構えていた。現在の場所には1996年に引っ越し、一時期中断していた夜の営業も再開した。地階と1階に店舗を借りているが、地階の入り口にある中華のお菓子を売っている「蓮香老餅家」は、香港に2店舗を構えたときからある、こちらも歴史的に長い中華菓子店だ。2009年には姉妹店「蓮香居」をオープンしている。

 中華料理「鏞記酒家」での一族内の権力争いが法廷闘争にまで及んだ出来事と同様に、蓮香楼でも2代目の顏志人さんの死後、数億香港ドルといわれる遺産相続の配分を巡り顏志人さんと24年間同居していた韓怡さんが、顔志人の最初の妻と2人目の妻との間にもうけた子どもを相手に訴えを起こしたが2011年に敗訴している。その他にも「蓮香」の登録商標を巡り香港と広州で裁判沙汰となり、2015年、高等法院は香港側の勝訴と判断するなど争いが絶えない。

 店舗の住所にはビルの名前は入っていないが、曽昭?大廈(Tsang Chiu Ho Building)という名前でビルに入居し、店舗の上は30軒が入る住居用のマンションとして使われている。海外に登記されている「PREMIER ERA」が2016年1月15日、約1億5,300万香港ドルでビルを購入。2017年9月にはさらに3億5500万香港ドルを再投入し、1平方フィートあたり約2万5,000香港ドルでマンション内のオーナーから物件を次々と買い上げた結果、マンション全体の9割の物件所有者がPREMIER ERAとなった。

 契約は2019年第2四半期に終了し、オーナー側は契約満了を契機に再開発を計画。城市規劃委員会(Town Planning Board)にはホテル、オフィスを建設する予定として申請している。

 香港の商業ビルにおいて慣例では満期の6カ月前から話し合いを始めるのが一般的。ここ数カ月以内に自ら厨房にも立っていたことのある3代目の顔尊輝さんを中心とした蓮香楼経営陣は移転か店を閉じるという判断をしなければならい。仮に移転を決めたとしても、新たな物件探しや内装工事を勘案する必要があり経営判断を迫られる。いずれにしろ「歴史的雰囲気」を感じながら飲茶を食べることはもうできなくなる確率も高いと、多くの香港人が惜しむ声を上げている。