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香港・西貢のジャパニーズフレンチが話題に 随所に料理長のこだわり

日本の美意識と哲学と驚きを皿に込めて盛り付けをする長尾さん

日本の美意識と哲学と驚きを皿に込めて盛り付けをする長尾さん

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 香港の郊外・西貢の白沙灣沿いにあり、ジャパニーズフレンチを提供する「WA THEATER RESTAURANT」(Shop on the LG/F and UG/F., The Pier Hotel, Pak Sha Wan, Sai Kung, NewTerritories, TEL 2779 7797)が郊外にありながらも度肝を抜かれるこだわりの強さで話題になっている。昼は7コース(800香港ドル)、夜は12コース(1800香港ドル)のメニューで展開する日本の食材を主に使用したフレンチ懐石だ。

 昨年11月にオープンした同レストランは、ホテル開業予定の建物のグランドフロア部分を使い、畳敷きの和室や和風間仕切りでプライベート感のある空間、オープンキッチンが見られるカウンター、ふ頭を望む横並びのシートなど全27席を用意。2階の個室がオープンすれば、もう10席増える。コーナーごとにモニターも設置し、生産地の風景や食材の映像を流す。

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 料理長は長屋英章さん。東京と南仏マルセイユ、京都と各地での経験を現在の料理に生かしている。長屋さんのこだわりで、店内で使う水を日本の青森白神山地から仕入れ直接提供しているほか、料理にも使っている。

 長屋さんの料理は一枚一枚の皿を舞台のシーンに見立て、その章ごとにタイトルがあるのが特徴。食材は季節ごと、仕入れの状況によって変化するが、基本のストーリーには軸がある。一皿目のプロローグは「おとぎ話~朝霧の風景から」と名付け、登場するのは玉手箱に見立てた白い煙の中から登場するアミューズ。「香港では最初にうま味の強いもので驚きを与えることが必要」と香港ならではの特徴を取り入れ、ハーバー沿いの環境を前に編み出したアイデアだという。箱の中は、季節の旬のもので構成し、例えばウニとウニのフォームをのせたライスクラッカー、即席の浅漬けのイメージで水ナスを生ハムで巻くことで生ハムの塩分が野菜に浸透し、より味わい深くなるという野菜など、3種のアミューズを並べる。

 長屋さんがいくつかの料理で、和食器の上に左下から右上に向かって平筆で描く「黄金比」は、カーブに沿って食材を並べ、組み合わせるアクセントや皿に置かれた味の点までも違う味のソースを使うなどして構成する。この黄金比のカーブを左利きの客に対しては逆のラインに引くこともあるというほど、「皿の上に置かれた食材を心地よく口に運べるように」と気を遣う。

 ホワイトアスパラガスは60度前後で3時間煮込むことで、食感を残しながら野菜の甘みを引き出す。ベルガモットの香りが脂溶性であることを生かし、アスパラを焼くときにベルガモットの香りをまとわせているが、このベルガモットは長屋さんが信頼を寄せる高知の農家から1年前に予約したもので、現在使用するのは昨年11月に塩漬けにして仕込んだもの。

 「ヨーロッパは左右対称、フレンチでも上からソースをかけるものなど、食べる方向性によって変化は少ない。しかし日本美意識は左右非対称、光と影、アンバランスなものの中に美意識を感じる文化」と長屋さん。自身の料理の中に日本の美意識を追求しているという。「日本は原価ベースでものを考えるが、香港の人は価値で値段を決める」とその違いを話し、日本の食材を生かした哲学の詰まった料理で客をもてなす。

 営業時間は、ランチ=12時~14時30分、ディナー=18時30分~22時30分。火曜定休。