香港最大手のデベロッパーの一つ「新世界発展(New World Development)」が尖沙咀(Tsim Sha Tsui)に大型施設「Victoria Dockside」の中核施設である「K11 Musea」を2019年第3四半期に開業すると発表した。
「Victoria Dockside」はインターコンチネンタル香港のすぐ北側に建設されるもので、高さ265メートル、66フロア、延べ床面積32万平方メートルを誇る。ホテルのローズウッドが入居するほか、みずほ銀行やみずほ証券などみずほフィナンシャルグループの企業が約6フロアにわたって入居する。
「K11 Musea」は、「Victoria Dockside」内で買い物を楽しんでもらうところで、ライフスタイル、カルチャー、アートを融合させたものを提供するのがコンセプト。同じ尖沙咀にあるショッピングモール「K11購物芸術館(K11 Art Mall)」の発展系といえるプロジェクトだ。
規模は5万平方フィート10フロアで、小売店、芸術エリア、ダイニング、エンターテインメント施設から成る。設計したのは、現在ニューヨークのハドソン川沿いで建設が進められている「ハドソンヤード再開発プロジェクト」と同じ「Kohn Pedersen Fox(KPF)」。メインターゲットは2000年代初頭に成人を迎えたミレニアル世代。これは新世界発展の創業家3世代目で副主席を務め、K11のトップを務める鄭志剛(Adrian Cheng)が1979年生まれとミレニアル世代であることにも関係していることと、世界的には2020年までにミレニアル世代の人口が45%伸び、消費力が6兆米ドルに達すると予想されることを見据えての戦略だ。
建物は自然を意識しており、植物をふんだんに取り入れて緑を多くするほか、室内は木材、石灰岩などの自然の材料を多く使用する。ローマのコロッセオのような円形競技場をモデルとした2000平方フィートの屋外プラザ「Sunken Plaza」は訪問客が自由に座ってリラックスできる空間で、蒸し暑い香港を考慮して冷却効果のある霧の噴射システムを備える。巨大なガラスの板に水を流して滝のようにする。その水は放水方法をプログラミングすることができるため、ちょっとした水のエンターテインメントになっており客を楽しませる計画だ。その頭上には25フィートの大型LEDスクリーンを設置し、ライブ時にスクリーンを同調させながら開催することができるほか、屋外映画の上映、アート関係のイベントに応用することができるとしている。
K11とK11 Museaはいずれも尖沙咀のメインエリアから少しだけ離れているところが懸念材料だ。K11は目抜き通りである弥敦道(Nathan Road)から東に少しだけ入っており、地下鉄のコンコースでつながっていることを考えればもう少し多くの集客が見込める。K11 Museaができる場所は過去には東急が入っていた人気ショッピングモールだったが、海港城(Harbour City)の開業で人の流れが変わり苦戦。そのテコ入れのために「Victoria Dockside」「K11 Musea」を再開発したという背景がある。同エリアで再整備が進められている「星光大道」(Avenue of Stars)と組み合わせてどのように人の流れが作れるのかに注目が集まる。
テナントの詳細はまだ明らかになっていないが国際的ブランドを呼ぶ計画で、香港限定ショップや旗艦店として開いてほしいと交渉しているとし、テナントのラインアップには自信を持っているようだ。