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パリ五輪閉幕、香港はフェンシングで金2個獲得 背景に育成環境の拡充

香港の選手が2つの金メダルを獲得したフェンシング

香港の選手が2つの金メダルを獲得したフェンシング

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 パリ五輪が閉幕し、香港代表のメダルは金2、銅2という結果を残した。東京五輪よりもメダルの数は減ったものの、張家朗選手がフェンシング、男子フルーレ個人で連覇したほか、江旻●(Vivian Kong)が女子エペ個人で金メダルに輝き東京五輪での雪辱を果たした。これにより香港は史上初めて2大会連続で、かつ複数個の金メダルを獲得したことになる。さらに、何詩●(Siobhan Bernadette Haughey)が女子水泳の100メートル自由形と200メートル自由形で共に銅メダルに輝いた。

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 過去の、香港代表としてのメダルは、1996年のアトランタ五輪でウインドサーフィン、ミストラル級の李麗珊さんが金メダル、2004年アテネ五輪の男子卓球ダブルス高禮澤・李靜ペアが銀メダル、2012年ロンドン五輪女子競輪の李慧詩さんの銅メダルと、金銀銅1個ずつだった。そして2021年に行われた東京五輪で一気に6個を量産した。

 パリ五輪では、フェンシングの個人競技で2個の金メダルに輝いたことが注目される。日本代表も金2、銀1、銅2と活躍したこの競技だが、個人戦で香港対日本の試合もあった。男子フルーレ個人では金メダルを取った張選手が準決勝で飯村一輝選手に15対11で勝ち、女子フルーレ個人では陳諾思選手が東晟良選手に15対14で勝利した。一方、男子エペ個人では山田優選手が何●桁選手に15対9で勝っている。

 わずか人口740万人の香港から好成績が出せた背景には、1990年代、李忠民(Ron Lee)さんなどがアジア大会などでメダリストになる選手が現れたことがある。今の現役選手の幼少期の頃、李さんらのメダリストが現役を引退してフェンシングのコーチになったほか、フェンシングスクールを創立し、普及の基盤が整い始めた。多くのフェンシングスクールは6回のレッスンで2,000香港ドルと1回当たりのレッスン料を低く抑えたほか、1,000香港ドル相当の用具を進呈することで、入門のハードルを下げる努力も行っている。今の状況は20~30年という長い年月と歴史を積み重ねて作られた。

 一方、日本がメダルラッシュとなった団体戦に香港代表は参加できなかった。これは選手層の問題が大きい。2人の金メダリストは競技人口の増加が期待される。

 スポーツが強い国は、普及、育成、強化が循環する仕組みが整っている。育成と強化で効果を上げたのは沙田(Shatin)にある「香港体育学院(HKSI)」で、北京五輪を機にHKSIも2009年から3段階に分けて大改修した。フェンシングだけで13面のピストがあり、そこに先端技術の施設を導入し、選手の科学的な分析などが可能となった。

 さらに、外国人コーチの招へいも大きい。張選手はフランス人コーチGregory Koenigさんに師事。2018年に来港した彼はフランスの代表のコーチ時代、リオ五輪のフルーレ団体で銀メダルに導いている。一方の江選手は2015年から香港代表のコーチを務めるルーマニア人コーチOctavian-Petru Zidaruさんから教えを受けた。彼女は2021年の東京五輪でも金獲得の最有力選手だったがベスト8で敗退。パリで東京のリベンジを果たした。

 フェンシングはピストと呼ばれる14メートルの細長いコートで開かれる。日本人の強みとして「アジリティー(敏しょう性)」が挙げられることも多いが、最初の一歩目の速さ、数十メートルの速さであればたとえ欧米に比べて体格が小さくても世界に通用する。フェンシングという踏み込みが勝負の分かれ目となる競技で、日本人と香港人は適性が高かった。

 香港では、金メダリストの報奨金が600万香港ドルと世界一高額であるほか、キャセイパシフィック航空はメダリストにビジネスクラスを1年間無料にしたり、MTRは生涯無料にしたりするなど、お金にまつわるトピックも多かった。2026年のフェンシング世界選手権は香港で開催されることもあり、香港人選手の今後の活躍に期待が集まる。

 ●=りっしんべんに惠、●=草かんむりに倍、●=王へんに韋。

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