深水●(Sham Shui Po)にある茶餐庁のレストラン「北河燒臘飯店」と「北河同行」のオーナーシェフで、「明哥(ミングー)」の愛称で親しまれる陳灼明さんは11月17日より、蘭桂坊(Lan Kwai Fong)で、期間限定のポップアップストア「北河同行」(G/F., 1 Lan Kwai Fong, Central, Hong Kong)を開く(●は土へんに歩)。
収益金をチャリティーに充てる慈善活動として開くポップアップショップ。ローカル色の強い茶餐庁が蘭桂坊でイベントを行うのは画期的な取り組みで、西洋人も多い同エリアでの展開で、香港ローカル文化に関心を持つ西洋人、外国人裕福層をターゲットにビジネスを展開してきたレストランの動向も注目される。
明哥は、香港の3つ星レストランのスターシェフに引けを取らないほど香港人の間では有名で、1952年に中国に生まれ、15歳から料理の世界に入った。文化大革命のときは紅衛兵にもなっていたという。1979年に香港に渡りレストランの厨房(ちゅうぼう)で働き始めた。1983年に現在の北河燒臘飯店の料理人になったが、当時は今よりも高級路線だった。1995年にオーナーが引退したため、同僚と一緒に店を引き継いだ。経営不振からコスト削減のため不法就労者を雇ったものの香港政府に見つかり、店を代表して3カ月間刑務所に入ったこともある。その間に同僚が似たような店を北河燒臘飯店の隣に開店するという背信行為もあった。
その中でも経営を続け、低所得者、身がい者、ホームレスなど社会的弱者に優しい超低価格路線の店に転換。「愛心飯堂」などと呼ばれるようになった。家庭で食べる中華料理を数十種類用意し、ビュッフェのように店に並べるスタイルで知られ、22ドルを払えばご飯とスープ、好きな3種類のおかずを選ぶことができる。
慈善活動をさらに強化し、2008年には地区のコミュニティー組織と一緒に、店で使える食事券の販売も始めた。イタリア・ナポリの文化「カフェ・ソスペーゾ」を持ち込んだもので、裕福層が1杯コーヒーを飲む時に2杯分を支払い、残り1杯は貧しい人が訪れてコーヒーを飲むときに使われるというものからヒントを得たものだ。食券の収益などを利用してほぼ毎日500人分の食事を無料で提供しているほか、数年前からはお年寄りの家を訪れて食事を届ける活動も行っている。
北河同行はもともと「北河點心茶餐廳」という名前で北河燒臘飯店の姉妹店だったが、今年に家主から大幅な値上げ提示され閉店。近くに新しい場所を見つけて、現在の名前に改名した上で同年7月に再出発した。慈善団体「北河(明哥)慈善基金」を設立し、11月8日に香港政府から正式な認可を受けて活動を開始した。活動の一環が蘭桂坊でポップアップショップを開き、9種類のランチボックス(32ドル)か、北河同行で使える24ドルの食券を販売し、収益金は恵まれない人たちに使うというもの。販売目標は貧困層を1年間支援するのに必要な4万食分だ。販売場所はポップアップショップのほか、同店のウェブサイト、セブン―イレブン全店、ウェブサイト「deliveroo」で、支払いは現金やクレジットカードで行う(1人1回最大3食分まで)。アプリAndroid Payを通じて1回4香港ドルのチャリティー募金も。
ポップアップショップで購入できるランチボックスは、チャーハンの定番「楊州炒飯」、麺のホーと牛肉を炒めた定番メニュー「乾炒牛河」、豆腐と豚肉がご飯の上に載った「豆腐火■飯」など6品。ベジタリアン用に野菜と麺を炒めた「乾炒三絲米」、トマトと卵を炒めたものとご飯が一緒になった「鮮茄蛋飯」など3種類を用意した(■は月へんに南)。
ポップアップショップの営業時間は11時30分~14時30分。土曜・日曜定休。12月15日まで。