香港の気象台に当たる香港天文台(Hong Kong Observatory)は9月16日、超大型台風「山竹(Mangkhut)」(日本では台風22 号)が香港に接近しシグナル10を発令した。シグナル10は2017年に続き2年連続で出された。17日現在死者はなし、けが人は391人と発表された。浸水、倒木、竹の足場の崩壊、道路封鎖、窓の崩壊など大きな爪痕を残した。
シグナル10は午前9時40分に発令。1946年に観測の記録を始めて以来通算16度目で、2017年の天鴿(Hato)に続いて2年連続となった。シグナル10になったときは、香港の南東150キロにあり、中心付近の気圧は950ヘクトパスカル(hPa)、風速は時速170キロ(日本で秒速47メートル)で少し勢力が衰えていたが、それまでの最大風速は250キロ(同70メートル)を超え、香港天文台の独自の区分けでは超大型の台風に属する。関西空港が浸水した台風21号は徳島県上陸時に950hPaだったことから、気圧としては同規模の台風だった。
山竹は9月4日に形成が始まり徐々に発達。9月7日に夜に台風となり「山竹」の名前が付いた。進路は西に向かい、香港に来る前にフィリピン、台湾を襲い被害を与えた。
天文台は9月15日16時20分にシグナル3を発令。翌16日の深夜1時10分にシグナル8に引き上げた。さらに7時40分にはシグナル9、2時間後の9時40分にシグナル10に変更した。10時55分になると暴風雨について、「紅色暴雨警告(Red Rainstorm Warning Signal)」も出し厳重な警戒を呼び掛けた。19時40分にシグナル8にグレードダウンし、17日の5時20分にシグナル3となった。
被害は香港のあちらこちらで発生し、ホテルでは尖沙咀(Tsim Sha Tsui)にあるインターコンチネンタル・ホテル入り口のガラスドアが強風で決壊したほか、紅●(Hung Hom)のハーバーグランド・カオルーンでは何十室ものガラスが割れた。その隣にあるオフィスビル海濱廣場二期(Two Harbourfront)でも強風でガラスが決壊。紙類の一部が外を舞った。昨年、深刻な被害を出した香港島東部の杏花邨(Heng Fa Chuen)は海岸沿いにあるが4メートルを超す波が打ち寄せた。昨年の経験を踏まえて超大型台風が来ることを予見して排水用のポンプを用意したが、それ以上の水が襲い16時ごろに停電と水の供給が止まる事態に陥った。棚屋と呼ばれる水上生活者用の家が多く並ぶ大澳(Tai O)は水面が従来よりも3.8メートルも上昇し家の中に海水が進入。住民が避難した。16日19時現在で34戸が浸水したほか、238本の木が倒れ一部は道を通れなくなった。
流浮山(Lau Fau Shan)にある、捨てられた犬を保護している拯救遺棄寵物中心(RCAP)には犬の檻に水が浸入し犬の頭のみが出るほどまでになった。道路が封鎖されたこともあり警察の助けもないため職員の必死の救助活動により、約400匹は幸いけがもなく無事だったが、あと少し水位が上がればで溺死する可能性があった。
交通機関では、バスは一部のルート以外ほぼ運休しており再開の目途はたっていない。地下鉄は、東鉄線は大埔墟から上水站まで運行を見合わせているが、それ以外は通常通り運行している。17日午後に再開すると見られる。東鉄線他の区域は10分または15分間隔で運行している。空港までの交通、エアーポートエクスプレスは通常通り運行。ピークトラムは運行を見合わせており、通常のトラムはハッピーバレー区域のみ運行を見合わせている。
香港国際空港を管理する機場管理局(AA)は、16日は889便が欠航すると発表したが、この影響で15日・16日に行われたアジア・ラグビー・セブンズで日本代表は優勝を果たしたものの、台風の影響で帰国できず延泊を余儀なくされた。教育局は17日に加え18日も小中学校を休校とすると発表したほか、17日は大学も休講になっている。
紅●=石へんに勘