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香港で梁安玉さんの叙勲伝達式 日本語教育の発展に寄与

和田充広大使兼総領事より勲記、勲章の伝達が行われた

和田充広大使兼総領事より勲記、勲章の伝達が行われた

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 在香港日本国総領事館は9月11日、令和元年春の外国人叙勲受章者として、旭日小綬章受章が発表されていた梁安玉(リョン・オンユック)香港日本語教育研究会会長への叙勲勲章伝達式を香港日本人倶楽部で執り行った。梁さんの日本語教育の発展に寄与した功績が認められ叙勲となったが、梁さんは日本語教師として22年教壇に立つ傍ら、日本文化をはじめとする日本研究についての論文なども多く発表している。

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 1980年に香港大学の文学部英文学科卒業後、文部省国費留学生として筑波大大学院に留学した梁さんが日本語と最初に出合ったのは、意外にも中学生時代に買ったファッション雑誌「装苑」だったという。「家庭科の授業で裁縫をする課題があったが、先生からの課題に面白みを感じることができず、『装苑』を参考に型紙を作り、服を作った記憶がある」と中学生時代を振り返る。その後、香港大学に入学して比較文学を専攻し、最初に20冊の本の英訳と出合う機会があった。その際、課題の作品にはスペインやドイツ文学もあったが、2つ用意された日本の作品、川端康成の「雪国」、三島由紀夫の「金閣寺」に触れたとき、「日本の作品には何か他と違いがある」と心引かれ、「これらを翻訳ではなく、原文で読みたいという思いが沸いてきた」と日本語と本格的に向き合う動機を語る。

 2回目の日本留学の際、以前の留学で感じた日本語の美しさや奥ゆかしさに魅せられ、女流文学を研究することになった。日本語の繊細さ、行間の意味や形容詞一つ取ってもニュアンスがさまざまであることなど、「日本語はとても女性的な言語で、自分の気持ちを女性が表現するのにとても適している」と女流文学の研究に没頭し、源氏物語、万葉集など、古典の作に囲まれた留学生活を送っていたという。

 「日本の古典文学には真理があり、昔から変わらない日本人の気持ちや人間関係、人に対する思いやり、人間の根本的なものが書かれている」と梁さん。「東日本大震災の前に読んだ方丈記を震災後に読み直して違う感覚を持った」などと言葉を紡ぐ。式典の際も梁さんは出席者に向け、「森鴎外の作品や源氏物語を声に出して読んでみてほしい」とメッセージを寄せたが、これには日本語が体で感じるリズムの美しさがあるからだという。「源氏物語を声に出して読むと、1日数時間ずつでも3カ月かかる」と笑顔をのぞかせる一面も。

 香港における日本語教育の現状についての梁さんの講演は90回以上を数え、世界中の日本語教育者のコミュニティーにも積極的に関わり続けている。梁さんが今後やりたいこととして、まず第一に来年11月にマカオ大学で開催予定の日本語教育国際大会を挙げる。世界中から1000人を超える規模の日本語教育者たちが集う大会で、隔年で開催されているが、次回はマカオでの開催となり、香港の日本語教育研究会がその運営を担う。ここに向けてさまざまな活動を組み立てていく一年となりそうだ。

 そのほか、香港における日本語教育の変遷をまとめたり、倉橋由美子さんや有吉佐和子さんなど、女流文学の作品に焦点を当て、作品から見る日本文学の世界観などを論文でまとめてみたりしたいという。梁さんの先祖の故郷、潮州語と日本語などにも似通った言葉や発音などがあるということから、「2000年以上前の言葉の世界、そのルーツなどを体系的にたどってみたい」と穏やかな表情で今後の目標を語る。

 香港日本語教育研究会は現在、年2回の日本語能力試験を行う機関として活動している。日本語学習者は日本語検定応募者の数字から見ると、2008年をピークに震災後減少傾向があったが、ここ4~5年は着実に数字も戻ってきた。幼稚園や小学校でも日本語クラスを設置するケースもある。インターネット環境などの影響もあり、以前と比べると独学の人も増え、学習者のレベルも非常に上がっている中、今後も定期的にスピーチコンテストの開催や奨学金の授与を続けていくという。

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