香港數碼港(Hong Kong Cyberport)は9月11日、全ての商業用テナントとスタートアップ企業に対して10月1日から2020年3月31日までの6カ月間、賃貸料を半額にすると発表した。香港科学園(Hong Kong Science Park)も同日、賃料を半額にするとした。ほかにも、賃料を割り引くオーナーが出てくるなど、デモの影響、米中貿易摩擦、ブレグジットなど世界経済の不安定さが、ついに香港経済で表面化し始めている。
陳茂波(Paul Chan)財政長官が8月15日に中小企業の支援スキームを発表し、9月4日の記者会見でも改めて発表した。財政長官が直接管轄している按掲証券(The HKMC Insurance)は、最高融資額は600万ドル、5年に分けて返済が可能で、90%の融資担保をする新商品を発売。さらに、既存の80%の融資担保商品の内容も改善させ、今後6カ月、中小企業は実質的に利息の支払いだけで済むなどキャッシュフローの負担を減らそうという政策だ。
サイバーポートとサイエンスパークは香港政府の方針に呼応する形で、独自で中小企業支援することを固めた。サイバーポートは、1万平方フィートの大きさを上限に入居している660社が恩恵を受ける。これにはサイバーポートに進出している小売店と●灣(Tsuen Wan)で運営しているシェアオフィスの「Smart-Space」も対象。サイエンスパークも最大で1万平方フィートを上限とし、同パーク内の小売店や九龍塘(Kowloon Tong)にある創新中心(InnoCentre)にも適用される。
不動産最大手の中原地産(Centraline)によると、同社が2019年1月~8月の店舗物件の売買取引は649件と前年同期の1162件と比べ、ほぼ半分に減ったことを明らかにした。成約金額も439億300万ドルから200億600万ドルと4割減少している。同じく銅鑼湾(Causeway Bay)にある耀華街30号(Yiu Wa Street)の800平方フィートの店舗は、オーナーが1984年、48万香港ドルで購入。不動産価格はどんどん値上がりし8,000万香港ドルで売り出していた。しかし、買い手が見つからず3,300万香港ドルでの契約となった。現在、このスペースは月6万ドルで冷凍肉を扱う会社が店を構えている。同じく銅鑼湾の時代広場(Times Square)の向かいにある商業ビル「Plaza 2000」に旗艦店を構えるファッションブランド「プラダ」は3フロア合計1万5,000平方フィート、毎月900万香港ドル、1日当たり約30万ドルの家賃を払っていた。2020年6月に7年の契約期間が終わるためオーナーである旭日国際集団(Early Light International Holdings)と家賃交渉を開始。44%減の500万香港ドル、または店を分割するというオファーを受け入れず店を閉じることが決定した。
深水●(Sham Shui Po)白揚街(Poplar Street)25E~25F号地下にある店舗は、広さが1098平方フィートで、当初は2,800万香港ドルで販売されたが、結局1,800万香港ドルで成約している。
オーナーは厳しい局面を迎えているが、それまでに十分な利益を出しているほか、値下がりといっても世界的にはまだ高値圏。少なくとも小売業としては家賃負担が減りビジネスがしやすくなったという見方もできる。
●=草かんむりに全 ●=土へんに歩