日本を代表する20世紀のグラフィックデザイナー、田中一光さんの作品で構成する香港における初の展示会「HELLO! IKKO TANAKA」が10月20日から、?魚涌のギャラリー「Space 27」(10/F, Block A/B, Tung Chong Factory Building 653-659 King’s Road, Quarry Bay, Hong Kong)で開催される。
香港のデザイナー、アラン・チャンさんによるギャラリー「Space 27」
同企画は100件に及ぶ音楽、芸術、工芸、武道、スポーツ、飲食、キャンペーンなどを通じて日本を大きく香港社会にアピールする在香港日本国総領事館主導の恒例行事「日本秋祭 in 香港-魅力再発見-」にも登録された認定イベントの一つ。
キュレーターを務めるのは、会場となるギャラリー27のオーナーでもある香港を代表するデザイナーのアラン・チャンさん。田中一光さんを師匠と仰ぎ、チャンさんの日本での活動の地盤を築いてくれた人物だと話す。「当展示を通じて、田中さんがデザインと文化に寄与した貢献と与えた影響についてより深く多面的な理解を得られることを願っている」と話す。
2002年にこの世を去った田中一光さんとアラン・チャンさんとの親交は深く、アランさんが初めて日本と関わった仕事にも田中さんが大きく関わっていた。アランさんの日本での最初の仕事は1987(昭和62)年、西武百貨店で行われたイベント「Hello Hong Kong」。それが1990年の香港西武のパッケージングの仕事につながり、後の香港西武の日本人スタッフも関わり創業したシティスーパーでのロゴにつながったという背景がある。そこで、アランさんは今回の展示会の名前を田中一光さんへの感謝の気持ちをタイトルに込め、「HELLO! IKKO TANAKA」とした。
大胆で明快な構成と色彩、強い平面性を特色とする田中一光さんのデザインは、伝統芸能、琳派や浮世絵といった近世以前の日本の美意識を西洋のモダンデザインに取り込んだ。海外でいち早く活躍した日本人グラフィックデザイナーでもあり、海外のデザインコミュニティーからも高い評価を得ていた。50年に上るキャリアの中で数多くの仕事を手掛け、中でも代表的なのが1973(昭和48)年より務めた当時の西武流通グループのアートディレクターとしての仕事と無印良品の発案とアートディレクターとしての仕事が挙げられる。西武デパートの青と緑の丸で構成された包装紙のデザインは、シンプルながらも強烈なインパクトを与えた。無印良品は今では世界中に知られ愛される日本発のブランドへと成長した。
同展では田中一光さんのポスターや作品100点以上を、「Roots of Design」「Words that Speak」「Across the Ocean」「Cultivating the Market」と題した4つのテーマに分けて展示するほか、田中さんと仕事を共にした西武百貨店社長を務めた水野誠一さん、創業以来無印良品のクリエーティブ・ディレクターを務める小池一子さん、グラフィックデザイナーの永井一正さんなどゆかりのある8人のビデオインタビューを上映し、田中さんの仕事と人生に焦点を当てる。
開催時間は13時~19時。入場無料。今月28日まで。