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突然のビザ取り消しに戸惑う香港人留学生 夢見た日本での新生活に影

新型コロナ肺炎は多くの留学生にも影響を与えている

新型コロナ肺炎は多くの留学生にも影響を与えている

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 日本国内では、一部の企業での入社時期延期や内定取り消しが話題になっているが、3月9日に中国から日本への入国規制が特別行政区の香港にも適用されたことで、留学予定、就職予定の多くの香港人が人生の岐路に立たされている。

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 日本政府は、発行済みの査証(ビザ)を無効とし、入国者には自宅やホテルで2週間の待機を要請しているが、韓国、香港、マカオについては、短期滞在で認めていたビザ免除を含む査証の効力を,当分の間,停止する決定を下した。外務省によると、無効となるビザは、香港、マカオを含む中国全体で約280万件。すでに入国している人に影響はない。

 日本学生支援機構「留学生調査」によると、香港から日本に留学する学生(平成30年度)の数は、大学院80人、学部690人、短大7人、専修学校441人、準備教育機関110人、日本語教育機関437人と合わせて1765人にも上る。

 ビザの取り消しは、現行の水際措置によるもの、日本の受け入れ校が感染地域からの留学生の向け入れを中止することによるもの、香港の大学が感染地としての日本への留学生派遣を中止するなど、さまざまな事情が背景にあると思われる。

 日本に長期滞在する人や就労を伴う活動をする方など短期滞在の査証以外の目的で日本に渡航する場合、事前に日本にある最寄りの入国管理局で在留資格認定証明書を受け取り、在香港日本国総領事館に申請して長期ビザの発給を受ける。

 ある日本語学校では今回のビザ取り消し後、再度学校側が日本側で入管での手続きを行い、在留資格認定証明書を香港の入学予定者に送付し、領事館に再申請している学生もいると聞くが、双方の手間だけでなく、日本からの郵便なども時間がかかっていることから、不安なままの学生もいるという。4月スタートをずらすことを日本の大学、学校側が認めないケースもある。

 日本政府も3月10日、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ,当分の間,在留資格認定証明書の有効期間を3カ月から6カ月に延長することとするなどの対応には動いたが、関係機関等が作成する「引き続き在留資格認定証明書交付申請時の活動内容どおりの受入れが可能である」ことを記載した文書の提出が必要となり、日本側の大学や学生を送り出す香港側の大学の許可などが必要であることが前提となる。

 香港で日本人商工会議所に所属する会員企業は計655社。日本人が駐在する企業も多くあるが、10年前と比較して鍵となるポジションには日本研究や日本語を専攻し、日本に留学したことがある香港人が要の役割を担っている。

 コロナが終息すればまたビザを再申請する方法もある。4月から日本での入社予定の香港人に向けては、各企業が終息後の来日を連絡するなど丁寧なケアを行っているところもあるという。ただ、1回取り消されたビザが留学生にとっては人生を大きく左右する事態となっている。

 同じような危機は東日本大震災の時にもあった。当時は、1年入学を遅らせた学生がいたり、在留カードも無かったりしたことから、再入国に対しても全ての手続きをやり直す必要があり、長期間香港に戻らざるを得ないケースもあったという。

 人の行き来を無くし、感染拡大を抑えることは大切で、観光は自粛することを理解できると考える人も多いが、重症急性呼吸器症候群(SARS)の教訓から、香港内で感染拡大を防ぐためのウイルス対策を講じた香港に、中国本土と同様の措置が適用されることについては理解しがたいと話す人もいる。事実、3月16日現在、香港の感染者数は149人と世界有数の人口密度が高い都市環境の中で、日本の4分の1の数値に抑えられており、ビザ取り消しの根拠を求める香港人の声が多い。

 終息宣言が出れば観光については数週間で復活するのが香港市場の特徴。しかし大学生の留学に加え、香港で日系企業を辞めて日本での留学生活を始めようとしていた人などもいる。航空券を取っていることはもちろん、すでに家の契約を済ませている人もいると聞く。在香港日本国領事館に問い合わせをしても「今後どのように対応できるかについてはきちんとした回答を受けらない」と話す香港人も多い。苦難な状況下、政府、大学など、各所の柔軟な対応が求められる。

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