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香港政府1375億香港ドルの追加経済対策発表 賃金の5割を半年間補償も

更なる具体的な追加経済対策を発表した香港政府

更なる具体的な追加経済対策を発表した香港政府

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 林鄭月娥(Carrie Lam)行政長官は4月8日、1,375億香港ドル規模の追加の経済対策・補償などを発表した。従業員給与について上限を9,000ドルとして50%を補償する、八達通(Octopus)を利用してMTRに乗車した場合、2割引とするなど新たに大胆な対策を実施する。

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 林鄭行政長官は「企業が継続して経営を続けることができ、雇用を守り、企業と市民の財政負担を軽減させることで、終息後の経済をできるだけ早く復活させるものであると期待している」と語った。コンセプトとしては簡単で明確であり、申請が容易で、人々の助けになる効果がある政策であるとした。

 すでに財政予算案の中で総額1,200億香港ドルの対策を策定しているほか、300億香港ドルの「防疫抗疫基金」を設立しており、今回は追加措置となる。総額では2,875億香港ドルとなり香港の域内総生産(GDP)の約10%に相当する規模だ。

 800億香港ドルは「雇用の維持」のためのもので、香港の2019年第2四半期の給与の中位数は1万8,000香港ドルであるとした。そこで香港政府は上限を9,000香港ドルとして給与の50%を6カ月間補填(ほてん)する。もし1万4,000香港ドルの場合は7,000ドルで、1万8,000香港ドルを超える場合は上限の9,000ドルとなる。条件は、雇用主は人員削減をしないことと強制積立年金(MPF)を支払っていること。遅くとも2020年6月には開始する。

 防疫抗疫基金の使用用途についても明らかになり16の業界に210億香港ドルを投入する。これは、規制がかけられた飲食や閉鎖措置された業界への補償という意味合いが強い。

 (1)飲食業界=店舗の面積に応じ25万~220万香港ドルを支給し、最低80%は従業員の給与に充てるほか、3カ月間は1人も解雇しないことを条件とする。カラオケ、バーと政府が運営する街市の中にあるレストランには5万香港ドルを追加補助。 (2)閉鎖した業種=ゲームセンター、サウナなどの浴場、ジム、ビリヤード、ボウリング、麻雀、クラブハウス、ライブハウスには10万香港ドルを支給。 (3)クリエーティブ産業=映画館には1スクリーン当たり10万香港ドル(ただし映画館1館当たり最大300万香港ドル)、元創方(PMQ)は2,500万香港ドルの補助とテナント料の減免、ブックフェアに参加する香港の出版及び印刷業界の企業には最高10万香港ドルを補助。 (4)建設業界=資格を持つ建設作業員に1人当たり7,500香港ドル、建設会社などに2万香港ドル、エレベーター、消防装置、電気、空調業者に1万香港ドルを補助。 (5)金融業界=香港交易所(HKEx)で取引する資格業者に5万香港ドル、證監会(SFC)のライセンス所有者に1人当たり2,000香港ドル、ゴミを収集する業者に従業員1人当たり8,000香港ドル、漁業、農業関係者に1人あたり1万ドルを補助。 (6)航空業界=小型機1機当たり20万香港ドル、大型機1機当たり100万香港ドルを助成する。香港政府は約270機が対象になるだろうと試算。航空業界を支援するサービスや貨物を運営する業者に100万~300万香港ドルを補助し約40社が恩恵を受けるとした。それとは別に機場管理局(Airport Authority)は20億香港ドルと投入して航空会社に対して50万枚のオープンチケットを購入し、終息後にチケットを香港市民に放出する。 (7)旅行業界=ライセンスを持つ旅行代理に2万~20万ドルを支給。ツアーコンダクターやガイドには1人当たり毎月5,000香港ドルの手当を半年間支給。ライセンスを持つホテルには30万~40万香港ドルを資金援助し、観光バスのドライバー1人当たり1万香港ドルを補助。啓德(Kai Tak)にある郵輪碼頭で営業する業者には半年間、家賃と管理費を減免するほか、フェリー会社には運行停止期間中の停泊料金を払い戻す。 (8)教育=3000校あるといわれる補習校には1校当たり4万ドルを補助し、学校内で食堂やパンなどを売る業者(約900社)には1社当たり8万香港ドル、弁当を販売する業者には1万香港ドル、スクールバスの運転手や保育士に1人当たり1万香港ドルを支給する。20万人が学生ローンを借りているが申請せずに自動的に2年間支払を無利子で延長。スポーツのコーチやダンスの先生などの文科系の先生には1人当たり7,500香港ドルを補助。 (9)運輸業=赤のミニバスのドライバーに6,000香港ドル、一定基準を満たしたタクシードライバーには7,500香港ドルを双方に支給する。赤いミニバスとタクシー、スクールバス、レンタカーなどのオーナーに3万香港ドルする。これとは別枠で、香港鉄路(MTR)は八達通を利用した場合、通常料金より3.3%割り引きしているが2020年7月1日~2021年1月1日の半年間、運賃を20%割り引く。割引による損失は16億香港ドルと見積もり、香港政府は8億香港ドルを上限に実際の損失額の50%を負担する(10)医療=医療関係者は毎年ライセンスの登記をしなければならないが、医者は400香港ドル、看護師は230香港ドルの更新料について3年間免除する。(13)雇用=今後2年間に60億香港ドルを投じて政府、民間合わせて3万人分の12カ月という期間限定の臨時的な就業機会を作るとした。2020-21年度、公務員は1万人を採用し、5000人分の実習生の枠を創設する。

 これ以外にも、住宅用途以外で使われているオフィス、工場などの水道代は2万香港ドルを上限に8カ月間75%を補助する予定だったが4カ月延長して12カ月間とするほか、所得税は毎年4~6月に支払うが支払猶予を3カ月間延長する。林鄭行政長官のほか政務長官と財政長官、13局などの政府高官の給与を1年間10%削減する。特に林鄭行政長官の給与は新年度から年俸が509万香港ドルから521万香港ドルに上がることが盛り込まれ立法会や市民の間で大きな論争となっていたことも背景にある。

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