香港政府は10月10日、湾仔(Wanchai)など香港内4カ所で香港IDを持っている香港居民を対象に新型コロナウイルスに感染しているかを無料で検査できる「臨時檢測中心(Temporary Testing Centres)」を開設した。
13日現在、累計感染者数が5202人、死亡者は105人、回復者4890人。12日の新規感染者は8人となっている。香港政府は9月1日~14日、感染の有無の無料検査を市民に提供する「普及社区検測計劃(Universal Community Testing Programme)」を実施し、178万人が検査を受けた。10月に入り、この1週間、新規感染者の数が増加傾向を示していることから檢測計劃の応用版のような形で臨時の検査センターの開設を急きょ決めた。香港政府は「早期識別、早期隔離、早期治療」というのを感染防止の基本としているため、そのポリシーの沿った政策の一環。
10月10日には湾仔の港湾道体育館(Harbour Road Sports Centre)に、翌11日には葵青(Kwai Tsing)エリアにある石籬社区会堂(Shek Lei Community Hall)にも開設。12日には九龍城(Kowloon Bay)の啓徳社区会堂(Kai Tak Community Hall)と油麻地(Yau Ma Tei)の梁顯利油麻地社区中心(Henry G. Leong Yaumatei Community Centre)の2カ所を追加した。
対象は香港ID所有者、香港の出生証明書などを所有している人で、無料で行う。ただし、6歳以下の子どもは検査を受けられない。普及社区検測計劃では予約が必要だったが今回は予約が必要ないため、感染の心配がある人であれば、すぐに検査を受けられる点が前回と異なる。
それ以外のプロセスはほぼ普及社区検測計測と同じで、検査場に到着後、身分証明書を提示し、電話番号を記入。その後、検査場に案内され口と鼻から検査棒を使って検体を採取する。検査結果は2、3日後に登録した電話にショートメッセージが届く仕組み。陽性であれば衛生署(Department of Health)が入院の手続きを行う。いずれの臨時検査センターも8時~13時30分と14時30分~20時。10月14日まで行うとしているが、検査期間の延長も視野に入れている。
香港政府によると、10月12日までの3日間で4938人が検査を受けた。その中には職員によるクラスターが発生した帝苑酒店(Royal Garden)を訪れた客も訪れた。感染者がいれば発表するとしている。
ただ、この検査も普及社区検測計測で持ち上がったように、検体が検査の目的でDNAの情報が収集され、検査以外のことに利用されるのではないかという疑念が高まっているため、どれだけの人が検査を受けるかは不明だ。営業時間内であれば、最寄りの検査センターにいつでも行ける。その点では重症急性呼吸器症候群(SARS)の教訓が生きている。
一方、渡航解禁の第一歩となる「トラベルバブル」について、香港政府は日本を含めた世界各国の政府と協議を進めているが、シンガポールとの話し合いが順調に進んでいる模様。これはシンガポール政府側がトラベルバブルを経済復興の足掛かりとして重要視していることもある。受け入れ枠の上限を決めたうえで、出張、家族への訪問、団体旅行から始める方向で、個人旅行はその先になるという。これらを勘案すると、日本と香港のトラベルバブルもまずはビジネスが基本となり、日本と香港両方のワクチン接種が終わるなど、ウイルスを持ち込むリスクがほぼ無くなって個人旅行がようやく解禁になる可能性が高そうだ。