JETRO香港の展示コーナーで11月16日、「日本産酒類企画展」が始まった。同所の入り口スペースに棚や冷蔵什器などを置いて、香港に売り込みを希望する日本各地の商品を紹介する。今回の企画展に伴い、冷蔵冷凍庫も新たに設置し、「常設展」「企画展」合わせて、現在約100社140点の商品を展示している。
今年1月以降、ホテルでの大型商談会や夏の「フードエキスポ2020」、秋の「レストラン&バー香港」などの大型展示会は開催を延期したり、海外からの出展も多いBtoBのブースは出展できなかったりするなどの制約があり、日本の新商品を香港に紹介する機会を失っていた。既に香港での取引関係がある企業はこれまでのつながりを元に新商品を紹介できるが、コロナ禍で行き来できない状況の中、香港からの日本産品を購入する声はさらに高まっている。常に新商品を求め、商品を見て商談を希望する香港人バイヤーが多く、約1000のインポーター、ディストリビューター、飲食店関係者に展示商品リストを案内し、参加を促す。世界各地のJETROでもブース設置を発案したのは香港が初の取り組みで、既に延べ40社70人のバイヤーが事務所を訪れているという。
野菜や肉など一部アイテムを除き、加工食品、菓子類、飲料、調味料、冷蔵冷凍が必要な食品について、商品説明、サンプルの受け渡し、商談会の設定までをJETROが担当する。これまでに実現したオンライン商談件数は約30件。その中で「GABA配合のパックご飯」「稲庭うどん」などが成約にこぎ着け、既に香港のMUJIなどの小売店で商品が並んでいるという。
「香港人バイヤーの好みは安くておいしいもの。新商品で香港初上陸のものに飛びつく」と同事務所市場開拓部長の前田久紀さん。「日本側が送りたいものには菓子類、調味料、お茶、ふりかけなどのご飯のお供と言われる商品が多いが、逆に香港で求められるものは、同じご飯と合わせるものでも、角煮、カレーなど丼にかけるような商品が求められる傾向がある」と続ける。
日本からはお茶の提案なども多いようだが、緑茶商品も既に飽和状態の香港。玄米茶であればまだ引きがあるものの、緑茶を売り込みたいのであれば、お茶そのものを粉にする、パッケージに凝る、使いやすいパッケージするなど「機能性」を加えて、それをアピールするとバイヤーの反応も変わるという。
日本産鶏卵は地域を問わずカタログのみでも問い合わせがあるアイテム。もともと湖北省武漢エリアの鶏卵が多く出回っていた香港市場では、新型コロナ肺炎の拡大により本土の鶏卵の取引が一時ストップし、そのタイミングで日本産に切り替えた企業なども多いという背景もあると見られる。
今回の企画は酒にフォーカスしているが、12月は、たれ、つゆなどの調味料、魚介類、畜肉製品、練り物製品、野菜などの「鍋物関連食品」を特集する予定。香港人ディストリビューターやバイヤーらが、より興味を持ちやすいテーマで臨む。
「香港と日本をしっかりつなぐ。買いたいというニーズに応える。ボリュームは大きな展示会にかなわないが、香港市場にコミットする」と高島大浩所長は意気込む。この常設展示コーナーに加え、12月以降、大型プロジェクト「日本食材消費回復・輸入拡大事業」を香港で展開する。15年間にわたり,日本の農林水産物の最大の輸出先である香港では6月、官民が一体となって取り組む枠組み「香港日本産食品等輸入拡大協議会」も立ち上がった。JETRO香港が推進する日本食材サポーター店と連携し、香港日本料理店協会らが現地ニーズの調査なども行う。加えて、飲食情報サイト「OpenRice」やフードデリバリ―アプリ「Deliveroo」などとも連携して、日本食材のさらなる輸出拡大を支え、日本食材を扱うレストランや小売店を応援する企画を予定しているという。