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日系企業を取り巻くビジネス環境調査 製造業で回復基調、最大の関心は「香港の出入境制限」

香港の日系企業でもビジネス環境には少し改善がみられる。

香港の日系企業でもビジネス環境には少し改善がみられる。

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 在香港日本国総領事館、日本貿易振興機構(ジェトロ)香港事務所、香港日本人商工会議所は10月19日、香港日本人倶楽部で「第5回香港を取り巻くビジネス環境にかかるアンケート調査」について記者会見を開いた。第3四半期(7~9月)の香港は、米中関係の悪化や新型コロナウイルスの感染拡大、香港国家安全維持法への不安が依然として残るものの、全体的に前期と比較すると改善が見られる結果となった。

 この調査は在香港の日系企業を対象とし、新型コロナウイルスの感染拡大による景気低迷、2019年から続くデモ・抗議活動、さらに今年6月に制定された香港国家安全維持法など、香港でのビジネス環境が大きく変化する中、3カ月ごとにアンケートを実施することにより、この先3カ月の見通しを予見し、自社の位置付けを客観的に判断してもらうことと、香港政府に対する伝達などにも使うことを目的として行っている。香港日本人商工会議所、香港日本料理店協会、香港和僑会などに所属の606社に回答を依頼し、296社より回答を得た。調査は10月5日~9日、インターネットを通じて実施した。

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 今回の最大のポイントは、全体として「改善」と回答した企業の割合が「悪化」および「大幅悪化」と回答した企業の割合を差し引いたDI値が、前期からの反動もあり、28.7ポイント上昇して3.2ポイントとなり、上向いた傾向になったことで、香港マーケット、中国マーケットの持ち直しがみられる点だ。

 業種別のDI値は、前回まではあまり差がなかったが、製造業と非製造業で大きく違いを見せ、製造業が改善した。製造業は食品や広東省などでの工場を香港で管轄する日系企業の割合が大きく、中国国内の状況が改善したことにより製造業のDI値が良くなったと見られる。

 業績に関しては、20年7月~9月期が前期と比較して「改善」と回答した企業の割合は前回の22.6%から31.9%に増加。主要業種別に見ると、大幅な改善を見せたのが精密および電気・電子機器などの企業で、商社・貿易・卸売・金融・リース・運輸・倉庫などでも横ばいと答えるところが多かった。一方、情報・通信およびメディア・広告、建設・不動産、飲食・小売り、ホテル・観光などは横ばいまたは悪化の傾向が強く、内需型の業種が引き続き大きな影響を受けている。業績の悪化要因では「新型コロナウイルス」の影響が最も大きかったと回答した企業は82.1%に及んだ。

 会見では「香港国家安全維持法への懸念と影響」についても質問が集中した。その影響について、前回は31.4%の企業が「マイナスの影響が生じ得る」と回答したものの、今回「マイナスの影響が生じている」と答えた企業は8.5%にとどまった。7割近い企業が法制定には懸念を示しているものの、その影響となると「影響は生じていない」が54.3%。「現時点では分からない」が36.2%と大部分を占める。あまり懸念を示していなかったり、現時点では分からないと回答する企業が多い理由として、在香港日本国総領事館高田真里首席領事は推論としながらも、「法律について書いてあることは理解できても、実際どうなるかが分からない」という見方、「普段通りにしていれば、そこまで影響が感じられないから分からない」と同じ回答でも、さまざまな見方がある可能性を解説。JETRO香港の髙島大浩所長も「前回より改善はしているものの、この分からない状態が続くと香港のレピュテーションが落ちるという懸念が生まれる」と分析する。

 今回初めて「1年前と比較した香港ビジネスの環境評価」について問う質問を新設したが、昨年10月時と比較すると、「変わらない」(36.3%)、「少し悪化した」(39.3%)が合わせて約7割5分を占めた。項目別に見ると、事業コストや人材コストなどにはあまり変化がないものの、政治の安定性、生活環境・安全性など社会の仕組みに対する不安から悪化と感じる面が大きくなっている。

 香港政府に対する要望としては、強制検疫措置の緩和や日本・中国本土との往来制限の緩和を望む声が多く、併せて賃金補助制度の継続等、経済対策の強化を望む声も多く寄せられたという。引き続き、在香港日本国総領事館、ジェトロ香港事務所と香港日本人商工会議所は、香港政府に対して同調査の提出、対面での伝達等を希望しながら、申し入れを行っていくという。