瞬く間に世界の動きを止めた新型コロナ肺炎、2020年香港経済新聞の年間PV(ページビュー)ランキング1位は、新型コロナ肺炎関連、入境規制条例の延長を伝えた記事だった。
毎年年間ランキングの上位に香港の祝日発表の記事が入るが、香港の祝日を調べる在港日本人やビジネス関係者が大幅に減ったことに代わり、ランキング上位のほとんどに新型コロナ肺炎関連、政府の発表や措置についての記事が並び、世界の中でも厳しい措置を講じる香港、また日々変わる規制を追いかける人が多かったと見られる。
2位も新型コロナ肺炎関連、中国本土以外の外国から香港に入る人には全て、ホテルでの14日間の強制隔離を義務付けた記事だった。これまでも香港に入境後には自宅やホテルの部屋から一歩も出てはいけない厳しい措置を講じてきたが、クリスマスを前に多くの海外からの帰国する人も増えることから、ホテルでの強制隔離を義務付けた。3位から5位もコロナ肺炎関連で、日本政府、香港への渡航中止勧告を解除(3位)や、香港が「トラベルバブル」で日本などと協議(4位)など明るい兆しが見える記事に注目が集まっている。一方で、その期待もむなしく入境制限を無期限延長、エステとマッサージ店は閉鎖(5位)や香港に再び新型コロナの暗雲の兆しか(7位)など、ふたたび状況が悪くなり、規制が増えることも多くの人が関心を持っている。
観光客も訪れなくなった香港で、ミシュラン中華「ダドルズ」がディナーで80年代点心を食べ放題にしたこと(7位)なども、コロナ禍故に実現した策であるとも読み取れる。九龍湾の徳福広場に開店した香港最大の「MUJI」(9位)は、スーパーマーケット業態にして生鮮食品も扱う店にしたことで注目を集めたほか、10位以下にもドンキ新店開店のニュースをはじめ、香港財閥の運営に変わったアピタやユニーを展開する企業が出店した新しいスーパーの話題など、日本商材を中心に販売することを報じた記事がランクインした。
1. 香港政府、年内の香港観光は断念 外国からの入境禁止制限条例を年末まで延長(7/24)
2. 中国以外から入境は「14日間の強制ホテル隔離」 香港政府が突然発表 個人渡航解禁遠のく(11/4)
3. 日本政府、香港への渡航中止勧告を解除 キャセイ航空は関空線を一部再開 (11/2)
4. 香港が「トラベルバブル」で日本などと協議 新型コロナ対策、公共の場は4人まで緩和 (9/10)
5. 入境制限を無期限延長、エステとマッサージ店は閉鎖 医療崩壊防止新対策で、新規感染者は1桁台に (4/13)
6. 香港最長の海底トンネル、12月27日開通へ 屯門と香港国際空港間結ぶ (12/8)
7. ミシュラン中華「ダドルズ」 ディナーで80年代点心を食べ放題に 水曜~金曜限定 (5/18)
8. 香港に再び新型コロナの暗雲の兆しか ロイヤルガーデンホテルは従業員感染で14日間閉鎖 (10/10)
9. 九龍湾の徳福広場に香港最大の「MUJI」 日本野菜や米も扱う新業態に (6/23)
10. 香港のシティスーパー、華潤集団に売却へ 昨年後半から経営環境厳しく (8/5)
昨年は香港民主化デモの混乱が続いた翌年に新型コロナ肺炎の拡大と香港にとっては2年にわたって厳しい状況となっているが、10位以下にも多くの日系企業の進出や日本食材を扱う店の増加の記事なども見られた。
食のみならず、アパレル関係から日用品に至るまで、世界の中でも、ここまで日本のモノがあふれ、そのファンがここまで多い場所は少ない。民主化デモにより香港のプレゼンスに疑問を持つ人が増えた一方、日々の生活には大きな影響はなく、日本に渡航できないという状況が、さらに日本を求める声や行動になり、規制さえなければ、レストランでは飛ぶように日本の食材が消費されていく。先が読めない中、今回のコロナについても政府への支援を求めるだけでなく、全くチャレンジしたことがない業種に参入しアグレッシブに取り組む前向きな香港人たちがいて、新しいサービスが驚きのスピード感で生まれるという香港の強さも見える。
香港経済新聞は日本語のメディアである以上、日本との接点についての取材も大切にしながら、香港ならではの世界各国の香港への取り組みなどにも目を向け、日本人や日本企業が世界で生き残るための小さなヒントとなるような動きも取材して記録していきたい。