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香港市民のイギリスパスポート(BNO)旅券として認めず

香港住民が持つ海外在住英国民旅券(BNOパスポート・左)と香港パスポート(右)

香港住民が持つ海外在住英国民旅券(BNOパスポート・左)と香港パスポート(右)

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 1997年の香港の中国返還以前に生まれた香港住民が持つ海外在住英国民旅券(BNOパスポート)について、1月31日以降は有効な身分証明と旅券しては認めない方針を中国政府が明らかにした。イギリス政府が同日からBNOの資格を満たす香港市民に対し、英国移民への道を開く特別なビザの申請を始めることへの対抗措置だ。

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 BNOは1987年に初めて発券された赤い色のパスポートで、香港の中国返還前日の1997年6月30日まで登録できた。つまり、7月1日以降に生まれた香港人は濃い青色の香港パスポートのみ保有できることになる。アメリカの入国審査制度(ESTA)によるとビザ無しで訪れることができるのは、香港パスポートは170カ国・地域と19位、ESTAではBNOは対象になっていないが、イギリスのビザなどに関するサイトによると118カ国・地域となっている。単純比較はできないが香港パスポートのほうが使い勝手が良いため、大抵の旅行は香港パスポートを使い、BNO保有者はバックアップとして所有している人が少なくなかった。

 BNOは植民地用のパスポートで、ステータスは本人のみで更新も一生可能だが、家族には適用されない。イギリスに渡っても最大6カ月しか滞在できず、市民権は得ることはできない。入国審査でもイギリス人として手続きをするのではなく、外国人と同じ列で審査を受けなければいけない。つまり、イギリス政府としては旅行するためのものとして有効だが、それがイギリス国民とは認めないというものだった。

 しかし、イギリス政府は香港国家安全維持法の施行により「市民の自由に対する侵害」としてステータスの変更を表明し、1月31日、BNOに対して特別ビザの受け付けを始めた。現在、全人口750万人のうち約290万人、4割弱がBNOを持っているが、2つの選択肢がある。一つは、5年間にわたり就職や就学をすることができるもので、さらに1年滞在すれば市民権を取得できるようにした。つまり、5年間働いてきた人は6年目に、現在働いている会社または新しい就職先から労働ビザのスポンサーになってもらうのが基本。もう一つは最大で30カ月滞在可能なもので、もう30カ月延長でき、最大60カ月の観光ビザに近い。イギリス国内外両方から申請できる。

 このステータスはBNOを持たない配偶者と18歳以下の子女、パートナーなどの同行を認めるため、人口約7割の540万人が申請資格を得る。18歳~23歳(大学就学期間を想定)で親がBNOを所有するケースは18万7000人が該当する。

 英国政府が提供する国民保健サービス(NHS)を受ける資格がある一方、年金、税的控除、児童手当などのようなサービスは受けられない。申請料金は、1人当たり5年=250ポンド(3万6,000円)、30カ月=180ポンド(2万6,000円)。ただし、非ヨーロッパ国籍者がイギリス滞在中にNHSを受けたい場合は健康保険付加料(IHS)を支払う必要がある。5年ものは18歳以上の大人1人当たり3,120ポンド(45万円)、30カ月は1,560ポンド(22万円)となっている。

 イギリスへの移住は一定の流れになるが、外国へ渡って生活基盤をリセットする必要があり、かつ香港でのキャリアを生かせる補償もなく希望の職種につけるかどうかは不明。移住にも申請料金以外の多額の費用がかかるため、大きなうねりとなるのかはまだ不透明だ。

 中国政府がBNOの有効性を認めなくなったため、例えば、渡航先で政治クーデターや日本で大規模な自然災害を受けたときに中国大使館や総領事館の助けは受けられなくなる(1国2制度であるため、ステータスは香港だが国籍は中国となるので、海外で何かあった場合、香港人の対応は中国大使館・総領事館が担当する)。またBNOを使って香港税関での出入境はできなくなった。ただし、香港生まれの香港人は永久居民であり出入境はIDカードを利用するため大きな影響はない。中国政府もそれは認識しており、BNOの無効化はイギリス政府への対抗措置という意味合いが強い。中国政府は「さらなる措置を取る権利を留保する」とコメント。BNO所有者には選挙権の制限を加えるといった議論が出てきており、BNOをめぐる問題はしばらく続きそうな気配だ。

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