香港政府は3月24日、上海の復星医薬(Fosun Pharma)とドイツのビオンテックが共同開発・製造している新型コロナウイルス用のmRNAワクチン「復必泰(Comirnaty)」の接種を一時停止すると突然発表した。併せて林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は21日間の強制隔離の短縮についても触れた。
香港は24日現在、累計感染者数が1万1420人、死亡者は204人、回復者1万963人、新規感染者は10人となっている。香港で提供されるワクチンは、北京に本社を置く「科興控股生物技術(Sinovac Biotech/シノバック・バイオテック」が開発した不活性化ワクチンの「克爾来福(CoronaVac)」、「復必泰(Comirnaty)」、イギリスのアストラゼネカとオックスフォードが開発したワクチンの3種類。
既に克爾来福と復必泰の接種が始まっており、3月23日時点での1回目の接種者は40万3000人で全人口の5.4%に当たる。そのうち克爾来福が25万2880回、復必泰は15万200回。
香港政府は3月24日早朝、復星医薬の関連会社である復星医薬(香港)から、復必泰のロット番号210102において、キャップ部分に関連するパッケージングなどの欠陥が複数見つかり、すぐに接種を一時停止するようという通知を書面で受けたと発表。既に調査は始めているが、原因が判明するまでの間、一時停止することが望ましいと判断した。
210102は2月28日に58万5000本分が香港に到着し、有効期限は2021年6月。キャップ部分の緩みにより中身が漏れていたのが22件、キャップの緩みのみ、または容器に傷があったのが16件、汚れが付着していたのが11件、ひびが入っていた容器が8件あった。問題のあったワクチンは廃棄された。3月7日にはロット番号210104の復必泰が75万8000本輸入されているが、こちらはまだ使っていないという。
mRNAを利用した復必泰はマイナス70度以下で保存しなければならず、保存期間は6カ月。開封後は摂氏2~8度で冷蔵保存しなければならず、保存期間は5日。ワクチンは最低21日の期間をおいてから2回目の接種を行わなければならないが、データによれば2回目は19日~42日は投与が可能。世界保健機関(WHO)では最大42日まで延長できるとしている。
香港政府は「ワクチンの成分そのものにリスクがあると考えるない」とコメント。2回目の接種を予約した人などについては「3月27日に状況を説明したい」とした。香港政府は接種率を上げるために優先する人を既に2度にわたって拡大したが、これにより香港政府の思い通りに接種を受ける人が増えるかどうかは未知数だ。
林鄭長官は3月23日に行われた記者会見で、現在、政府指定ホテルでの21日間の強制隔離についての短縮について触れた。「観光客やビジネスマンなどから、さまざまなプレッシャーがある。肉体的にも精神的、その他の面でも大きな負荷がかかっているのは理解している。個人的には21日から、ほかの国で行われているように14日に短縮するための要素を見つけたいと考えている。そのためにはしっかりとした予防措置が取られていたり、ホテルを離れた後も医療監視が実施されたりするなどを公衆衛生当局が保証することが条件となるだろう。11月の後半からの感染の急拡大の後、現在の数値に落ち着いたのは実施している防疫措置の効果があったからだが、一方で人々の利益やニーズも考慮する必要がある」と、しっかりを感染拡大を抑え込める措置が実行できるかが短縮への鍵であるとした。