香港の下町の問屋街ながら最近はおしゃれなカフェなども増えて注目を集めるエリア、深水●に5月1日、日本の伝統工芸品を中心に扱うショップ「ORION(オリオン)」(G/F, 169 Lai Chi Kok Road, Sham Shui Po, KLN TEL 6504 3490)がグランドオープンする。
建物は元々1930年代に建てられたもので、入り口スペースは2階分を吹き抜けにして天井の高さを出し、天井にファンも設置した。店頭の看板や棚、机などフレームに木を使ったものがどことなく日本の雰囲気を感じさせるが、これらも創業者の一人がデザインしたものだという。「ORION」の名前には一つ一つの工芸品をオリオン座それぞれの星と捉え、その線をつないでいくような思いを込めた。
「市場は『低コスト・大量生産』が主流となる中、良い製品には価値やストーリーがあり、それが異なる生活体験をもたらし、生活の質を高めることができると信じている」という。元々同世代の30代3人の若者でスタートした同店は、ウェブサイトでもマグカップやテーブルウエア、アロマ商品など、さまざまな商品を並べる。同店は、オンラインショップで販売するアイテムの中から、特に日本のものに特化して焼き物を中心に紹介するリアル店舗として運営する。
150平方メートルの店内には、備前焼、高岡銅器、常滑焼、美濃焼などの焼き物や作家の商品も並べる。通常の焼き物は色味も形もシンプルなものも多いが、笠間焼のRefrappe(ラフラぺ)さんの「ひつじのうつわ」は羊の形をした器や、土佐和紙を使ってうさぎの形を模ったランプ「NEKOのAKARI」など、かわいらしさを表現した工芸品も多い。備前焼は創業者の一人、梁永樂さんが最も好きな焼き物の一つ。その理由は、「化粧をしていない素朴さ」だと言い、茶器をきっかけに備前焼を知ったことで、「そこで『わびさび』という言葉も知った」と話す。
梁さんは「日本の伝統工芸との出合いはユーチューブだった」と明かす。オンラインでも一番の売り上げである箱根の寄せ木細工は、最初の見た目は模様をペイントしているようにも見えてしまうくらい滑らかなのに、そのパーツ、パーツをつなげる隙間までが、木を組み合わせて作られたものだということが驚きだったという。実際何度も日本を訪れる中で、それぞれのエリアには職人がいて、それぞれの土地の特徴を生かした職人技があることを知り、2019年、觀塘にオープンしたのが始まり。「この職人技を知ってしまった以上、これを知らせていかなければならないと思った」と創業当時を振り返る。
コロナの状況の中、自宅でヨガをする人も増え、ヨガに使うこともできる畳のマットもラインアップに加えたのが、い草でできた「畳ヨガマット」(670香港ドル~)。福岡のイケヒコ・コーポレーションの商品を販売しているが、富士山や桜の模様を施したもの、グラデーションがかかったものなど、カラフルな商品を扱う。
価格帯も一般の香港人が買い求めやすいようにと、日本とそこまで変わらない価格を設定することも、この立地だからこそ実現したという。「中環だったらこの価格で販売することもできなかったと思うし、手に取りやすい価格にしたことで、若い人にもたくさん知ってもらいたい」。焼き物だと最初に手が出にくい人もいると考え、お香も販売しているが、「お香とスタンドをセットにして紹介することで、最初はお香から日本の焼き物に親しんでもらってから他の商品を買ってもらうのもいい」と梁さん。
現在はソフトオープンとして営業している。営業時間は13時~20時。月曜定休。
●=土へんに歩