農林中央金庫香港駐在員事務所と兵庫県北部の3市2町を管轄とするJAたじまが7月13日・14日、同JA管内で生産している「コウノトリ米」を題材とした食育授業を香港日本人学校で行った。5年生を対象に、大埔校52人と香港校51人の児童が参加した。
授業は、JAたじまの職員と学校をオンラインでつなぐ形で実施。但馬地方ではコウノトリが生息していたが、高度経済成長のあおりで生態系が崩れたため絶滅。その後、海外からコウノトリを輸入し、共生しながら安全・安心な米とたくさんの生き物を同時に育む農法で米作りを行っている。そのためには、無農薬、冬場での灌水(かんすい)、短期的に水を抜く中干しの作業時期を1カ月ずらしていることなど、主食である米作りの工夫や努力、苦労する点などをスライドや影像を使って説明した。
その後、香港への日本米の輸出が2012年の2202トンから2020年は1万9687トンまで増加していること、香港のスーパーやECサイトでも販売されていることなど、輸出や販売状況などについて同事務所の浅田健一所長が解説した。
輸出先1位が香港であることに児童は驚きと喜びの声を上げ、東京に出荷された米が船で運ばれてくるだけではなく、札幌経由の輸送ルートがあることにも関心を示していた。児童からは「なぜ水田の横に溝を掘るのか」「コウノトリ米以外の米は何があるのか?」などの質問も投げ掛けられた。
この活動を始めるきっかけについて、浅田所長は「JAバンク食育教育応援事業による補助教材本『農業とわたしたちのくらし』を2018年度から香港日本人学校に贈呈している。当金庫シンガポール支店とJAたじまと組んでシンガポール日本人学校で食育授業を行った実績を知り、2019年度から香港でも実施する予定だった。しかし、抗議活動とコロナ禍で見合わせることになった。今年4月、当事務所が香港日本人学校に補助教材本を贈呈しに訪問した際、校長からオンラインによる授業は可能というアイデアをもらい、JAたじまからも快諾をもらい実現に至った」と経緯を話す。
児童の反応や受けた質問については、「児童は、コウノトリ米の生産に携わるJA職員の声や現場の映像、香港の小売の店頭の写真を実際に見聞きすることを通じ、日本の米について生産から香港での販売に至る一連の流れを体系的に理解する良いきっかけになったと感じている。授業をとても熱心に聞き、積極的に質問をしてくれて、関心の高さを感じた」と手応えを感じたようだった。「児童の日本の農業や食品に対する関心の高さを知ることができ、大変有意義な機会だったと感じている」と話す。